【感想】『彼女が知らない隣人たち』あさのあつこ|一番身近な隣人・・それは家族

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彼女が知らない隣人たち|あさのあつこ

ケイチャン

ケイチャン

【2022年58冊目】

今回ご紹介する一冊は、

あさのあつこ

『彼女が知らない隣人たち』です。

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【感想】「一番身近な隣人・・それは家族」

日常系スリラー

空に昇る白煙
それは平穏な日々の終わりを告げる狼煙であった

私の住む街でテロが起こった・・
主人公である咏子(えいこ)は激しく動揺します
そういうことは遠い外国で起こることでしょう?
私の街で起こるなんて!

高校生の息子が冷徹に指摘します
母さんテロはどこだって起こるものだよ、と

テロの衝撃が街を駆けるなか、咏子の職場で問題が起こる
外国人の技能実習生が、暴行を受けたのだった
お前たち外国人がテロを起こしたんだ、証拠はないがそうに決まっている!だって外国人だから!!

日本人だって良い人もいれば、悪いヤツもいる
外国人だってそう
謂われなきレイシスト(人種差別主義者)の決めつけには怒りを覚えます

物語は外国人問題に興味を持った咏子が
日本の外国人差別を知ることになります
私の身近で、こんな問題があったなんて・・
知らなかったわ、と

「一番身近な隣人・・それは家族」

この作品のもうひとつのテーマ
それが『家族』です
不仲な家庭で育った咏子は、自分の体験を反面教師し
温かい家族を作ることを熱心にしてきました

衣食住をキチンと整え
世間体を保ち、常識を大切にする・・
しかしその世間体と常識とは
人によって世代によって、異なるものです
咏子が気が付かないうちに、夫と息子に断絶が出来ていた

あっという間に成長するのが子供ですね
自分の子はいつまでも子供と思うが
ところがどっこい日々大きくなる
そして感受性豊かな子供の心は、その純粋さゆえ
世間体と常識の壁をたやすく打ち破る

外国人問題と家庭を両軸に物語は進み
人を知る大切さ
人を理解する難しさ
そして人を知り理解する喜びを感じました

あなたには心から相談できる人が
いますか?

作品紹介(出版社より)

それは「遠い火事」のようで、本当は「私の隣」で起きている

地方都市で暮らす三上咏子は、縫製工場でパートとして働きながら、高校生の翔琉と小学生の紗希、夫の丈史と平凡な毎日を送っていた。ある日の夕方、駅近くの商業施設から白い煙が上がるのを目撃。近くの塾に通う息子が気になり電話を掛けるが、「誰かが爆弾を仕掛けたテロだ」と興奮して語る様子に違和感を覚える。翌日、今度は市立図書館でも同様の事件が発生。いったいなぜこの町で、こんなことが? 咏子は今まで気にも留めなかった、周囲の異変に気がついていく……。


一章 日々の風景
二章 守りたいもの
三章 水溜りに映る影
四章 季節の終わりに
五章 明日咲く花
六章 わたしの物語
エピローグ

作品データ

タイトル:『彼女が知らない隣人たち』
著者:あさのあつこ
出版社:KADOKAWA
発売日:2022/3/26

作家紹介

あさのあつこ

1954年、岡山県生れ。青山学院大学文学部卒業。
小学校講師として勤務の後、作家デビュー。
『バッテリー』で野間児童文芸賞、『バッテリーII』で日本児童文学者協会賞受賞。
『バッテリーI〜VI」で小学館児童出版文化賞受賞。
『たまゆら』で島清恋愛文学賞を受賞。
著書は『No.6』『弥勒の月』シリーズ、『The MANZAI』『ぬばたま』『ゆらやみ』『花や咲く咲く』『もう一枝あれかし」『花を呑む」『末ながく、お幸せに』など多数。リズミカルで詩的な広がりを感じさせる文章と、瑞々しく繊細な心情描写から生まれる共感度の高い作品が人気を博し、ファンタジーから時代小説まで幅広いジャンルの物語を紡ぎ続けている。

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