ケイチャン
【2022年162冊目】
今回ご紹介する一冊は、
木爾チレン 著
『私はだんだん氷になった』です。
もくじ
【感想】「繰り返す悪夢、氷とは誰なんだ?」
あなたは子供の頃に心が折れるほどの
衝撃を受けたことがありますか?
登山家であった父のエベレストでの遭難死
それに続くマスコミと世間の心無い中傷に
言葉を失ってしまった美少女、氷織(こおり)ら
傷を負った少女達の物語です
本作は前作の『みんな蛍を殺したかった』と
地続きの設定になっています
併せて読むとなおいっそう世界観に浸れます
また氷織の父親は栗城史多がモデルとなっているようです
僕は河野哲の『デス・ゾーン栗城史多のエベレスト劇場』を
読んでいたので本作の背景はばっちりでした
誹謗中傷に耐え生きる氷織
彼女の生きる支えとなったのが『推し』の存在でした
アイドルグループの一員に疑似恋愛することをで
自分の存在意義を感じていたのでした
そんな氷織がある事件を機会から
より一層『沼る』こととなる
それが推しになりすました人とのSNS上での恋愛です
より加熱する疑似恋愛に身も心も蕩ける氷織
しかし氷織の現実はより深刻さを増すのだった
とうとう最後の一線を越えてしまい
氷織の日常は瓦解する
もう、死ぬしかない・・
最後に疑似恋愛していた推しの背後の人と
実際に合うために札幌に向かう
しかし厳寒の地で合った背後の人は
失望しかなかった・・
本作の特徴として似たような名前の
登場人物がたくさん出てくることが上げられます
読者を意図的にミスリードする
作者の企みが伺えますが
僕は強引にミスリードされるのも嫌いじゃないな
中盤から既視感を覚えるストーリー展開となります
そしてサブ主人公のVチューバーあくまちゃんが
見破る悪夢のロンドとは、いかに?
前作に引き続き紹介される
深すぎるオタク文化にも
興味がそそられます
『背後』って言葉を初めて知りました
どんどん悪化していく展開に
普通はげんなりとするところですが
氷織ちゃんがけっこう
打たれ強く生きて行くので
僕もついていけました
あなたは今
SNSでやりとりしている人と
実際に合ったみたとして
失望しないって思いますか?
作品紹介(出版社より)
辛い現実を生きられなかった少女たちが、誰にも言えない恋に縋ったゆえの、禁断の黒歴史ミステリ。
最愛の父は、エベレスト登頂間際で猛吹雪に巻き込まれ凍死した。学校では陰湿ないじめを受け、家に帰れば義父に性的暴力を振るわれる。
氷織の唯一の生き甲斐はアイドル・四宮炭也の推し活だけだった。だが感染病流行によって推しのライブが中止になったことをきっかけに、氷織は推しの「なりきり」とのやりとりにのめり込むようになる。顔を見たこともない相手への恋――。それがすべての悲劇の始まりだった。
作品データ
タイトル:『私はだんだん氷になった』
著者:木爾チレン
出版社:二見書房
発売日:2022/9/21
作家紹介
木爾チレン (きな・ちれん)
1987年生まれ。京都府出身。大学在学中に応募した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR‐18文学賞」優秀賞を受賞。
美しい少女の失恋と成長をナ逓た『静電気と、未夜子の無意識。』でデビュー。
その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆し、作品表現の幅を広げる
木爾チレンの作品紹介
『静電気と、未夜子の無意識。 』(2012/08/24)
『殺戮の天使 2 BLESSING IN DISGUISE』(2017/04/28)
『殺戮の天使 3 ONCE IN A BLUE MOON』(2018/04/27)
『わたしのこと、好きになってください。』(2018/09/28)
『これは花子による花子の為の花物語』(2019/03/09)
『みんな蛍を殺したかった』(2021/06/21)
『ぜんぶ、藍色だった。』(2021/06/25)
『私はだんだん氷になった』(2022/09/21)