【感想】『両手にトカレフ』 ブレイディみかこ|本の中に、友がいた

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両手にトカレフ|ブレディみかこ

ケイチャン

ケイチャン

【2022年104冊目】

今回ご紹介する一冊は、

ブレイディみかこ 著

『両手にトカレフ』です。

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【感想】「本の中に、友がいた」

イギリスの下層階級で懸命に生きる少女を描く
現代文学です

中学生のミアはサイズの合わない小さな制服を着て
今日も腹を減らしていた

無職でシングルマザーの母
生活保護の給付金は
ドラッグとなり、母の鼻に吸い込まれる
衣服はもとより、朝晩の食事にも事欠く日々

「本の中に、友がいた」

そんなミアが進められたのが1冊の本
日本と朝鮮の血を引くカネコフミコの自伝でした
大正時代に生きた彼女の過酷な少女時代に
自らの境遇を重ねるミア

しかし彼女の友は現実世界にも居たのです

ミアの詩をラップのリリックにしたいと思うもの
あるいは仲たがいしてしまったかつての親友
ミアに進んで話かけるものもいるのです

しかしミアは壁を作り、自分の世界に籠ってしまう
貧しいが賢く周りがよく見えている、ミア
そうです貧困に喘ぐ日々を送る者にも
プライドがあるのです

でもミアの生活はギリギリの綱渡りでした
そして母親がとうとうトラブルを起こしてしまう
ここにはもう居られない・・
弟を連れて家出するミア
ここではない世界に行くんだ

まだ小さく無力な少女が幼い弟を連れての逃避行
やるせなさが募ります

だがこの逃避行を経てミアは気が付くのです
私はこの世界にいてもいいんだ、と
そして自らの壁を壊して
人々の助けを受け入れることにより
自分を少し肯定できるようになり
物語は終わります

本書のなかに
対等な人間関係はない
という言葉があります
生まれ
財産
容姿
才能
世は不平等に溢れて、公平な関係はない

この不平等さと折り合いをつけて生きるしかないが
プライドが邪魔します・・これが難しい

卵から孵るには殻を破らねばならない

自分の壁を壊して
世界の一員となる
これが大人になってゆくということかも知れませんね

・・そうしたら変なプライドをもったままの僕は
まだ子供なんだな笑

あなたは自分の壁を
壊すことが出来ますか?

作品紹介(出版社より)

私たちの世界は、ここから始まる。

寒い冬の朝、14歳のミアは、短くなった制服のスカートを穿き、図書館の前に立っていた。そこで出合ったのは、カネコフミコの自伝。フミコは「別の世界」を見ることができる稀有な人だったという。本を夢中で読み進めるうち、ミアは同級生の誰よりもフミコが近くに感じられた。一方、学校では自分の重い現実を誰にも話してはいけないと思っていた。けれど、同級生のウィルにラップのリリックを書いてほしいと頼まれたことで、彼女の「世界」は少しずつ変わり始める――。

作品データ

タイトル:『両手にトカレフ』
著者:ブレイディみかこ
出版社:ポプラ社
発売日:2022/6/7

作家紹介

ブレイディみかこ

ライター・コラムニスト。
1965年福岡市生まれ。
1996年から英国ブライトン在住。
2017年、『子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から』で新潮ドキュメント賞を受賞。2019年、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』で毎日出版文化賞特別賞受賞、Yahoo!ニュース | 本屋大賞 ノンフィクション本大賞受賞などを受賞。

ブレイディみかこの作品

『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』(2016年9月)
『 子どもたちの階級闘争――ブロークン・ブリテンの無料託児所から 』(2017年4月)
『 花の命はノー・フューチャー──DELUXE EDITION 』(2017年6月)
『 労働者階級の反乱~地べたから見た英国EU離脱~ 』(2017年10月)
『 ワイルドサイドをほっつき歩け ――ハマータウンのおっさんたち 』(2020年6月)
『 ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain 』(2020年10月)
『 何とかならない時代の幸福論 』(2021年1月)
『 女たちのポリティクス 台頭する世界の女性政治家たち 』(2021年5月)
『 他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ 』(2021年6月)
『 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 』(2021年6月)
『 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー2 』(2021年9月)
両手にトカレフ』( 2022/06/07)
『 ジンセイハ、オンガクデアル』(2022/06/13)
『他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ』(2021/06/25)

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