【本の感想】『青い鳥、飛んだ』丸山正樹|巨大なハンディを負う者たち

【2025年100冊目】
記念すべき100冊目!
今回ご紹介する一冊は、
丸山正樹 著
『青い鳥、飛んだ』です。
【感想】「巨大なハンディを負う者たち」
その正義感は、正しいことか?
些細なことが、大事件に発展し
道を踏み外した者たちの
転落の物語です
プロローグで語られるのは
万引きする、高校生のお話
・・もう止めとけよ!と不安的中
コンビニ店長に捕まってしまうんだ
主人公が交代し、次は捕まえた
コンビニ店長のお話
万引きは許さない!とそこへ
不審な中年男性がやってくる
案の定、万引きするオッちゃん
しかし捕まえる際にその万引き犯は
転倒して死んでしまうのだ

・・え!俺は犯罪者になったのか?
正義感がゆえに殺人犯となった
元コンビニ店長の克己さん
転落してしまった彼と
彼によって人生を狂わされた者は
その後どんな人生を送るのだろうか?
本作のテーマは『ケアリーパー』
(児童養護施設から自立する人)の
『18歳の壁』です
18歳で施設から追い出される
ミチルや真人の姿が不安気で心配です
失職し、住処を無くす
なんて不安で心細いことでしょう
女性は風俗でしか生きられないし
男性は世を恨まずにはいられない

とても恐ろしいことですね
けれども
必死に生きる者たちには
きっと救済がある
最悪の一歩手前で終わる
物語の結末に
一抹の希望がありました
転落してしまっても
人生は続いてゆく
諦めずに生きる姿こそ
唯一の在り方なのでしょう

転落してしまっても希望を失わずに生きてゆく自信がありますか?
作品紹介(出版社より)
大手フランチャイズ加盟のコンビニ店主・柳田克己は、「万引き犯など最低の人間」という信念を持ち、「万引きをさせない」のではなく、決して見逃さず「捕まえる」ことにしていた。ある日、克己は菓子パンを万引きした男を捕まえようとしたが、もみ合ううちにその男を死亡させてしまう。そして克己は逮捕され、人生は暗転していく。一方、児童養護施設で暮らしていた頃に万引きで捕まった過去を持つミチル。彼女はバイトを掛け持ちしながら必死に一人で生きていたが、コロナ禍の「シーセッション(女性不況)」で仕事を次々に失い、現在は違法メンズエステ店で働いていた。必死に生きながら、自分の夢の実現を目指す彼女は時折思うことがある。あの日、捕まっていなければ。そんな二人が、ある事件を契機に巡り会うことに……。
作品データ
タイトル:『青い鳥、飛んだ』
著者:丸山正樹
出版社:角川春樹事務所
発売日:2025/5/15
作家紹介
丸山正樹(まるやま・まさき)
1961年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部演劇専修卒業後、シナリオライターとして活動。
頸椎損傷による重い障害を持つ妻と生活をともにするうち、さまざまな障害を持つ人たちと交流するようになる。次第に、何らかの障害を持った人の物語を書くことを模索するようになり、2011年、ろう者の両親のもとで育った聴者を主人公にした『デフ・ヴォイス』(文庫化にあたり『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』に改題)でデビュー。
「デフ・ヴォイス」はスピンオフを含めて5冊刊行の人気シリーズとなる。ほかに居所不明児童を題材にした『漂う子』、事故で重傷を負った妻を介護する夫が主人公の『ワンダフル・ライフ』など一貫して社会的弱者とされる人の視点から物語を紡ぐ。『ワンダフル・ライフ』で「読書メーター OF THE YEAR 2021」総合第1位を獲得。
丸山正樹の作品
『デフ・ヴォイス』2011/7/25
『漂う子』2016/10/27
『龍の耳を君に』2018/2/21
『慟哭は聴こえない』2019/6/28
『刑事何森 孤高の相貌』2020/9/24
『わたしのいないテーブルで: デフ・ヴォイス』2021/8/31
『ウェルカム・ホーム!』2022/5/25
『水まきジイサンと図書館の王女さま』2022/7/19
『キッズ・アー・オールライト』2022/9/7
『刑事何森 逃走の行先』2023/6/19
『ワンダフル・ライフ』2024/1/11
『青い鳥、飛んだ』2025/5/15

