ケイチャン
【2024年125冊目】
今回ご紹介する一冊は、
松永K三蔵
『バリ山行（さんこう）』です。
もくじ
【感想】「なぜ山に登るのか？そこに迷いがあるからだ！」
これは愚行ではないのか？
登山道を外れ、道なき道をゆく
悩める中年サラリーマンを描く
仕事と人生の物語です
ケイチャン
皆さんは会社の飲み会に
参加していますか？
断ったら仲間はずれにされるかも・・
と、心配に思うこともありますよね！
会社の同僚たちと仲良く
山登りする場面から
物語はスタートします
意外なほどに楽しい♪
だが安寧な日々は続かない
社長の事業方針変更で
あっという間に経営は悪化し
動揺する社員たち
そんな中で気になるのが
決して同僚と馴染まない
妻鹿（めが）さん
・・彼はバリやってるらしいよ
みんなと仲良く協調して
定められた登山道をゆく自分と
誰とも馴染まず山登りも
自分のルートを行く妻鹿さん
ケイチャン
さてどちらのほうが上手く
人生をやっていけるのだろうか？
主人公の波多（はた）さんは
前職でリストラに合い
挫折しています
・・皆と同調しないのが悪かったのか？
そこで今の会社では
出たくもない飲み会に参加して
皆とコミュニケーションをして
保身を図ります
ケイチャン
みんなと一緒なら
安心＆安全だね
急速に悪化する業績で
会社内はリストラへの
疑心暗鬼が走り回る
・・僕のやり方は間違いだったのか？
そこで気になるのが
独立独歩の我が道を行く
妻鹿さんの存在だ
皆に疎んじられても
皆に認められる実力がある
ケイチャン
彼を知りたい
そして『バリ』ってのも
気になる！
さて『バリ』とは
バリエーション登山の略だそうです
登山道を外れ、道なき道をゆく
藪を掻き分け、崖を昇り、谷を下る
過酷な登山です
念願かなって妻鹿さんの
バリに同行する波多さん
前半は美しい沢を昇り
気分良く、楽しみます
ケイチャン
が、後半は酷いありさまに
密集した藪漕ぎに悲鳴し
恐ろしい崖の降攀に音を上げます
・・頼むからマトモな道を行ってくれ
だが妻鹿さんは、どこ吹く風の様子
後悔する波多さん
自分の言葉が追い詰めたのか？
ホントは何を思い１人でバリしてたのか？
けどもう答えは分からない・・
ケイチャン
妻鹿さんの影を追うように
１人バリ登山するようになる波多は
苦行のなかトランスとなる行者のようでした
苦しみの果てに恍惚を見るのは
なんか日本人らしですね
ケイチャン
あなたはみんなと
仲良しなふりをして
安全な道を外れずに
生きていく自信はありますか？
作品紹介（出版社より）
第171回芥川賞受賞作。古くなった建外装修繕を専門とする新田テック建装に、内装リフォーム会社から転職して２年。会社の付き合いを極力避けてきた波多は同僚に誘われるまま六甲山登山に参加する。その後、社内登山グループは正式な登山部となり、波多も親睦を図る目的の気楽な活動をするようになっていたが、職人気質で職場で変人扱いされ孤立しているベテラン社員妻鹿があえて登山路を外れる難易度の高い登山「バリ山行」をしていることを知ると……。
「山は遊びですよ。遊びで死んだら意味ないじゃないですか！ 本物の危機は山じゃないですよ。街ですよ！ 生活ですよ。妻鹿さんはそれから逃げてるだけじゃないですか！」（本文より抜粋）
会社も人生も山あり谷あり、バリの達人と危険な道行き。圧倒的生の実感を求め、山と人生を重ねて瞑走する純文山岳小説。
作品データ
タイトル：『バリ山行』
著者：松永K三蔵
出版社：講談社
発売日：2024/7/29
作家紹介
松永K三蔵（まつなが・けー・さんぞう）
1980年茨城県生まれ。兵庫県西宮市在住。関西学院大学文学部卒。
2021年「カメオ」が群像新人文学賞優秀作となる。
松永K三蔵の作品紹介
『バリ山行』2024/7/29