【感想】『腹を割ったら血が出るだけさ』 住野よる|誰にも知られたくない私を、見つけて欲しいの!

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腹を割ったら血が出るだけさ|住野よる

ケイチャン

ケイチャン

【2022年138冊目】
今回ご紹介する一冊は、
住野よる 著
『腹を割ったら血が出るだけさ』 です。

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【感想】「誰にも知られたくない私を、見つけて欲しいの!」

青春小説

もうタイトルが全てを表しています
肥大する自意識にぶんぶんと振り回されてしまう
そんな震えるような青春時代の少女を描く物語です

このテの作品を書かせたら
住野よるはもう達人の域に達しているのでしょう
溢れ出る気持ちを掬い取るような文章に
おっちゃんの僕も、かつてこの少女のようだった
あの頃を思い出して、心がフルフルと震えてしまうのです

愛されるを演じる、そんな自分が嫌いなんだ

不足ない人生を謳歌するように見える
高校生の糸林茜寧(いとばやし あかね)
しかし彼女は『愛されたい』という呪いに囚われて
愛される自分を演じていたのでした
そんな自分に反吐が出る・・死んでしまいたい

そんな彼女に希望が現れた
それが彼女が愛読する本『少女のマーチ』で
主人公を救う役割をもつアイです
雑踏の中見つけたアイを追いかけた時
茜寧は物語の主人公となるのでした

「誰にも知られたくない私を、見つけて欲しいの!」

女装の麗人、宇川逢(うかわ あい)
彼と出会い、茜寧は自分の物語を進める
物語の主人公のように
私も救われるはずなんだ

そんなことはなかった

望んでいた救いは得られなかった
しかしそんな茜寧を逢は掴んで離さなかった
心を理解するなんて無理なことなんだ
でも
心に寄り添うことは出来る
そんな逢の友情によって
愛されたいというもう一人の自分と
茜寧は和解し、共に生きることにしたのでした

雑踏に紛れて誰にも知られずにひっそりと生きたい
交差点のど真ん中で『私を見て!』叫びたい
そんな両極端な気持ちを持て余したことはありませんか

誰しもが自分が主人公の人生を生きている
しかしそれは他人から見たら
全ての人が脇役であるということ
その事実を受け入れて
主人公である他人を尊重できるようになることが
大人になるということかも知れません

自分の思いどおりになる人生
そんな物語を生きている人なんて
誰もいないのだから・・

作品紹介(出版社より)

女子高生の糸林茜寧いとばやしあかねは、友達や恋人に囲まれ、本屋でのアルバイトにも励みながら充実した日々を送っている。しかしそれは、「愛されたい」という感情に縛られ、ひたすら偽りの自分を演じ続けるという苦しい毎日だった。誰にも明かせない本心を解放できるのは、自分にそっくりな主人公が描かれる『少女のマーチ』という小説を読んでいる間だけだ。

そんなある日、茜寧は『少女のマーチ』の登場人物の一人、〈あい〉にそっくりな人と街で出逢う。本で読んだとおりの風貌と性格を持つその人は、自らを〈あい〉だと名乗った。これは偶然なのか――?

「愛されたい」に囚われた女子高生、ありのままを誇る美しい青年、自らのストーリーを作り続けるアイドル、他者の失敗を探し求める少年……それぞれの踏み出す一歩が交差して響き合う、青春群像劇。

作品データ

タイトル:『腹を割ったら血が出るだけさ』
著者:住野よる
出版社:双葉社
発売日:2022/7/27

作家紹介

住野よる(すみの・よる)

高校時代より執筆活動を開始。
2015年、デビュー作『君の膵臓をたべたい』がベストセラーとなり、翌年の本屋大賞第2位にランクイン。
他の著書に『また、同じ夢を見ていた』『よるのばけもの』『か「」く「」し「」ご「」と「』『青くて痛くて脆い』『麦本三歩の好きなもの』『この気持ちもいつか忘れる』がある。

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住野よるの作品紹介

『君の膵臓をたべたい』(2015年6月)
『また、同じ夢を見ていた』(2016年2月)
『よるのばけもの』(2016年12月)
『か「」く「」し「」ご「」と「』(2017年3月)
『青くて痛くて脆い』(2018年3月)
『麦本三歩の好きなもの 第一集』(2019年3月)
『この気持ちもいつか忘れる』(2020年9月)
『麦本三歩の好きなもの 第二集』(2021年2月)
腹を割ったら血が出るだけさ』(2022年7月)

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