短編

【本の感想】『一撃のお姫さま』島本理生|安易な恋愛なんて、もう無くない?

島本理生『一撃のお姫さま』|ケイチャンブックス
ケイチャン(サカキ ケイ)

【2025年118冊目】

今回ご紹介する一冊は、

島本理生 著

『一撃のお姫さま』です。

【感想】安易な恋愛なんて、もう無くない?

短編集

作曲のために
100万もってホストクラブへ行く!
表題作他5編が納められた
悩める女性たちの物語です

純粋に恋愛を楽しめたのは、いくつまで?

恋愛小説と呼ぶには
ちょっと風味が違う
5つの短編です
どれも女性が主人公で
それぞれに悩みがあります

①『停止する春』
ある日会社に行けなくなった女性の物語
心の傷はボディーブローのように
後で効いてくるからご用心です

②『最悪よりは平凡』
魔美(まみ)と名付けられた女性の物語
〈ちなみに兄は亜大陸(あだむ)笑〉
ハッピーエンドで、よかったね!

③『家出の庭』
義母が庭でテント生活を始めるとゆー
トンデモ設定ですが
優しいエンディングに、ほのぼのです

④『God breath you』
歳の差カップルのお話
なかなか重い設定でしたが
2人の真摯さに、幸あらんことを

⑤『一撃のお姫さま』
インスピレーションを求めて
ホストクラブに行くが、かえって
迷宮に惑うようなお話でした

「安易な恋愛なんて、もう無くない?」

さすがにオモシロイ!!

恋愛小説の旗手が描く
ちょっと恋愛小説っぽくない
お話たち

他人は予想がつきません

想像のナナメ上をゆく
動きをする登場人物たち

展開の読めないストーリーに引き込まれてしまいます

また複雑に揺れ動く心情を細やかに寄り添うように
描く技量は『さすが!』のひと言です

予想外の方向からパンチをくらったような
衝撃が後を引く作品たちでした

作品紹介

恋愛小説の旗手・島本理生の新境地!

他人からはままならない恋愛に思えても、本人たちは案外、その”雑味”を楽しんでいるのかもしれないーー。

*5つのちょっと不思議な、新たなる読書体験
「停止する春」
東日本大震災から11年目。会社で毎年行われていた黙とうがなくなった。
それから私は、仕事を休むことにした。代わりに、毎日時間をかけて大根餅を作る。ある日、八角の香る味玉を作り置きした私は、着ていたパジャマの袖口を輪にして戸棚に結び、首を突っ込んだ……。

「最悪よりは平凡」
掃除機をかければインコをうっかり吸い込み窒息死させ、夫が書斎を欲しがれば娘を家から追い出す母に、「妖艶な美しい娘」をイメージして「魔美」と名づけられた私。顔見知りの配達員にはキスされそうになり、年下のバーテンダーには手を握られ、不幸とまでは言い切れないさまざまな嫌気を持て余す。

「家出の庭」
ある日、義母が家出した。西日に照らされた庭に。青いテントの中で義母はオイルサーディンの缶を開け、赤ワインを飲んで眠る。家出3日目、私はお腹に宿した子が女の子だと知る。

「God breath you」
女子大でキリスト教を中心に近現代の文学を教える私はある日、ほろ酔いでおでんバーから出たところを若い青年に声をかけられる。彼は、世を騒がせた宗教施設で幹部候補として育てられた宗教二世だった。

「一撃のお姫さま」
歌舞伎町が舞台のアニメ主題歌の仕事を受けたアーティストの睡は、音ゲーの配信者兼会社員の友人から、曲作りのためホストに通うことを提案される。100万円を使い切ることを決めた彼女は夜な夜なチープな照明に照らされ、シャンパンコールを浴びることになるがーー。

目次

停止する春
最悪よりは平凡
家出の庭
God breath you
一撃のお姫さま

作品データ

タイトル:『一撃のお姫さま』
著者:島本理生
出版社:文藝春秋
発売日:2025/6/12

作家紹介

島本理生(しまもと・りお)

1983年東京生れ。
1998年「ヨル」で「鳩よ!」掌編小説コンクール第二期10月号当選(年間MVP受賞)。
2001年「シルエット」で群像新人文学賞優秀作を受賞。
2003年「リトル・バイ・リトル」で野間文芸新人賞を受賞。
2018年『ファーストラヴ』で直木賞を受賞。
著書に『シルエット』『リトル・バイ・リトル』『生まれる森』『ナラタージュ』『一千一秒の日々』『あなたの呼吸が止まるまで』『クローバー』『波打ち際の蛍』『君が降る日』『真綿荘の住人たち』『あられもない祈り』『アンダスタンド・メイビー』などがある。

島本理生の作品

『シルエット』(2001年10月)
『リトル・バイ・リトル』(2003年1月)
『生まれる森』(2004年1月)
『ナラタージュ』(2005年2月)
『一千一秒の日々』(2005年6月)
『大きな熊が来る前に、おやすみ。』(2007年3月)
『あなたの呼吸が止まるまで』(2007年8月)
『クローバー』(2007年11月)
『波打ち際の蛍』(2008年7月)
『君が降る日』(2009年3月)
『真綿荘の住人たち』(2010年2月)
『あられもない祈り』(2010年5月)
『アンダスタンド・メイビー』(2010年12月)
『七緒のために』(2012年10月)
『よだかの片想い』(2013年4月)
『週末は彼女たちのもの』(2013年8月)
『Red』(2014年9月)
『匿名者のためのスピカ』(2015年7月)
『夏の裁断』(2015年8月)
『イノセント』(2016年4月)
『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』(2017年6月)
『ファーストラヴ』(2018年5月)
『あなたの愛人の名前は』(2018年12月)
『夜 は お し ま い』(2019年10月)
『2020年の恋人たち』(2020年11月)
『星のように離れて雨のように散った』(2021年7月)
憐憫』(2022年11月)
天使は見えないから、描かない』2025/1/29
一撃のお姫さま』2025/6/12

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ケイチャン
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サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。食べることが大好きな僕が撮影している「本のある日常風景」と共に、本の紹介と感想のブログをお楽しみください!オススメの本は?この本気になるけど面白い?…など、読む本に迷った方への参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」【ケイチャンブックス】よろしくお願いします!一緒に読書を楽しみましょう!!
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