ケイチャン
【2024年43冊目】
今回ご紹介する一冊は、
柚月裕子 著
『風に立つ』です。
もくじ
【感想】「子供のために何を与えればいいの?」
南部鉄器の工房を営む
親子の元にやってきたのは
優等生の非行少年だった・・
不器用な父と息子の物語です
家族だから伝わらないこともある
主人公は父親の工房で働く青年
悟(さとる)さんです
親方としては尊敬しているが
親としては寡黙過ぎて愛情を
感じられない父に対して
わだかまりを持っています
そんな愛情の薄い父が『補導委託』
で非行少年を預かるというのだ
あの薄情なオヤジがどうして?
だいたい非行少年なんて怖いだろう!
よし、反対してやろう・・
ところがやって来たのは
おとなしく繊細な少年、春斗(はると)くん
しかも地元有数の進学高校に
通っていたというではないか
いったい彼に何があったのか?
一緒に暮らすうちに
徐々に春斗くんの事情がわかり
愛着もわいてくる悟さん
春斗の非行の原因・・
それは一方的で分かり合えない
春斗と父親との関係性でした
父親と息子との関係性を描く本作
春斗くんと父親との関係が
悟さんと父親との関係に
合わせ鏡のように映ります
それは1歩引いて俯瞰しなければ
見えてこない愛情のカタチ
今までは目に映らなかった
父親の姿に気が付く時
自分がいかに大切にされてたか
理解するのでした
しかし与えられて
迷惑なものだってあるんだ
それが
『人生の歩み方』です
子供が心配でたまらない!
迷子になってはいけないし
転んで怪我でもしたら大変だ
けど・・
大人になった子供の手を
引いてゆくことは出来ないんだ
2組の親子関係を見て
自分と父親との関係を
考えずにはいられません
鏡に映る自分の姿を
確かめるような物語でした
作品紹介(出版社より)
問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度ーー補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄。南部鉄器の職人としては一目置いているが、仕事一筋で決して良い親とは言えなかった父の思いもよらない行動に戸惑う悟。納得いかぬまま迎え入れることになった少年と工房で共に働き、同じ屋根の下で暮らすうちに、悟の心にも少しずつ変化が訪れて……。家族だからこそ、届かない想いと語られない過去がある。岩手・盛岡を舞台に、揺れ動く心の機微を掬いとる、著者会心の新たな代表作!
作品データ
タイトル:『風に立つ』
著者:柚月 裕子
出版社:中央公論新社
発売日:2024/1/10
作家紹介
柚月裕子(ゆづき・ゆうこ)
1968年岩手県生まれ。
2008年『臨床真理』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞して、主婦業のかたわらで作家としてデビュー。
2013年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞を受賞。
2016年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞を受賞。
2018年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位。
その他の著書に『慈雨』『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』『暴虎の牙』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『教誨』などがある。
骨太なストーリーと繊細な心理描写でヒット作品を連発し続けている人気作家。
柚月裕子の作品
『臨床真理』(2009年)
『最後の証人』(2010年)
『検事の本懐(短編集 )』(2011年)
『検事の死命(短編集)』(2013年)
『蟻の菜園 アントガーデン(2014年)
『パレートの誤算』(2014年)
『朽ちないサクラ』(2015年)
『ウツボカズラの甘い息』(2015年)
『孤狼の血』(2015年)
『あしたの君へ(短編集)』(2016年)
『慈雨』(2016年)
『合理的にあり得ない(短編集)』(2017年)
『盤上の向日葵』(2017年)
『凶犬の眼』(2018年)
『検事の信義』(2019年)
『暴虎の牙』(2020年)
『月下のサクラ』(2021年)
『ミカエルの鼓動』(2021年)
『チョウセンアサガオの咲く夏』2022/4/6
『教誨』2022/11/25
『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』2023/3/29
『慈雨』(上巻・下巻)2023/5/24
『風に立つ』2024/1/10