【感想】『王の家』江上剛|創業家の呪い

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王の家|江上剛

ケイチャン

ケイチャン

【2023年85冊目】

今回ご紹介する一冊は、

江上剛 著
王の家 です。

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【感想】「創業家の呪い」

お家騒動を描く会社小説

社長の自分は・・老いた
では人生の全てといってよい
この愛する会社を誰に譲るべきか?
・・創業家の悲哀を描く物語です

100年家具と称して
上質で耐久性に優れた商品を
売り物とする宝田家具ですが
今は家具もファストファッションの時代です

ファッショナブルで低価格な
海外メーカーに押されて
業績は少しずつ落ち込んでいました
だが問題はそれだけではない

それが後継者問題です
創業者として会社を率いてきた社長も
老いてしまった・・
創業家の常として候補となるのは
自分の子供たちです

3人の娘たち

強気で傲慢な、長女
強かだが経営に興味ない、次女
そして誠実な、3女

この3人のうち誰かが社長となり
他の者が補佐するのが理想的ですね

しかし毛利の3本の矢のように
結束して会社を盛り立てよう!
おーー!!!・・とは
残念ながらなりませんでした

「創業家の呪い」

絶対権力者の社長
その座を巡って
もともとあまり仲の良くない
3人の娘の間に緊張が走る

他の者が社長になれば
私が排除されるのではないか?

かくして血を分けた姉妹同士の
骨肉の争いが始まってしまう

現代版シェイクスピアのリア王

リア王の世界観を
モチーフとした本作
甘い言葉を弄して
権力を手に入れる長女と次女

たいして素直な言葉が裏目に出て
追放される3女
正直なのがいいとは
限らないのです

老いて判断力が低下し
嘘を見破られず
騙されてしまう父親
子供が正直で素直なのは
幼少期の頃までなのです

元社長の父親が
元祖昭和おやじってかんじで
あんまり共感できませんでした笑
俺の面倒を見てくれって・・
いまどきそんなん
無いでしょう

さてシェイクスピアのリア王は
荒野を彷徨い
絶望的なエンディングを
迎えるのですが

本作のエンディングは
ささやかな希望を感じさせて
多様性の令和時代にふさわしと
思いました

ひとり孤独な社長よりも
同じような仲間たちがいる
一般社員のほうが
幸せなのかも知れませんね

作品紹介(出版社より)

日本一の家具店を一代で築いた“家具王”宝田壮一だが、寄る年波には勝てず、また後継者選びにも悩んでいた。権力の座を望む長女、その姉を恐れる次女、父親が気がかりな三女、この三姉妹も役員だが、それぞれの強い思いが不協和音となり、家族間に暗い影を落とす。一族を取り囲む社員たちに加えて投資ファンドの策謀が絡み、影は濃く、深くなるばかり。宝田家具には“破滅”への道しかないのか!?

作品データ

タイトル:『王の家』
著:江上剛
出版社:光文社
発売日:2023/5/24

作家紹介

江上剛(えがみ・ごう)

1954年兵庫県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行。
1997年の第一勧銀総会屋事件では、広報部次長として混乱収拾に尽力した。
2002年、築地支店長を務める傍ら『非情銀行』を発表して作家デビュー。
2003年3月にみずほ銀行を退行し、以後、執筆に専念している。小説、ビジネス書など著書多数。

江上剛の作品紹介

『非情銀行』 2002/03/01



Disruptor 金融の破壊者 2021/9/22
王の家』 2023/05/24

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