【感想】『残照』田中芳樹|故郷で死ねることは、幸せである

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残照|田中芳樹

ケイチャン

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【2023年32冊目】

今回ご紹介する一冊は、

田中芳樹 著

『残照』です。

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【感想】「故郷で死ねることは、幸せである」

モンゴル帝国の大遠征を描く歴史小説

チンギス・ハンの孫に従い
『フラグの征西』へ赴いた
漢人武将の郭侃(かく かん)を描く
ユーラシア大陸を往復する雄大な物語です

台地が尽きるまで征服せよ!
聖王チンギス・ハンの遺訓のもと
計画された大遠征
西へ!ひたすら西を目指すのだ!!

だが主人公の郭侃は
被征服民漢族の武将です
ヤル気満タンのモンゴル人とは
だいぶ立場が違います

物語の前半はフラグ・ハンに従い
アッバース朝を始め中近東アジア諸国に
連戦連勝、次々に領土を増やす
快進撃が描かれます

現代の砲兵隊長である郭侃は
最新兵器『大砲』を駆使して
主に攻城戦で活躍します
落した城の数・・700!
えー!ちょっと盛ってない?
と思うくらい尋常じゃない数ですね

「故郷で死ねることは、幸せである」

ところがエジプト軍との戦いに
大敗北を喫した頃から
雲行きが変わってくる
そしてモンゴル帝国皇帝モンケが死に
内紛の危機が始まるのだ

これが郭侃には好機となります
なにがって?
故郷に帰る好機です

そして後半は中国に帰り
フビライ・ハンの武将へと
『転籍』した郭侃の
その後が描かれます

郭侃は親会社に買収された
子会社の役員のような
立場なのかなあと
僕は思いました

親会社の意向には
逆らえない
親会社の役員を
立てなくてはいけない
しかし自社社員の不満を
飲み込まねばならない

難しい立場を
綱渡りのように
歩む姿が目に浮かびます

そんな立場に役立つのが
技術(大砲の操作)と
人間関係(親会社役員との繋がり)
なのかな、と思いました

ユーラシア大陸を往復し
故国で余生を過ごすことの出来た郭侃は
厳しい時代の荒波を
見事に乗り切った人生と言えるでしょう

苛烈で気難しい主君に従い
大遠征から生還した
ひとりの武将の人生を描いた
スケールの大きい物語でした

作品紹介(出版社より)

「海に沈む夕日を見たい――」モンゴル軍を率いた漢人武将は、
たった一つの夢を叶えるために地の涯を目指す。

中国史上ただひとり、陸路で地中海に達した武将がいた。男の名は郭侃(かくかん)。祖父の代からモンゴルに仕え、攻城戦と砲兵に長けた漢人だった。1253年モンゴル帝国は、イスラム世界の征服とさらなる領土拡大のため「フラグの大西征」を開始。37歳の郭侃は、15万の蒙古軍部隊長として西方遠征の途についた。新兵器「回回(フイフイ)砲」をひっさげ、瞬く間に各地を陥落させる。だがエジプトを前に、隻眼の猛将バイバルスが立ちはだかり……。

作品データ

タイトル:『残照』
著者:田中芳樹
出版社:祥伝社
発売日:2023/1/13

作家紹介

田中 芳樹(たなか・よしき)

1952年熊本県生まれ。学習院大学大学院修了。
1978年『緑の草原に…』で第3回幻影城新人賞を受賞しデビュー。
1988年『銀河英雄伝説』で第19回星雲賞。
2006年『ラインの虜囚』で第22回うつのみやこども賞を受賞。

田中芳樹の作品紹介

『アルスラーン戦記』(1~16巻)
『銀河英雄伝説』(1~23巻)
…他多数
白銀騎士団』(2022/3/2)
残照』(2023/01/13)

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