【感想】『六つの村を越えて髭をなびかせる者』西條奈加|異文化を、うやまう気持ち

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六つの村を越えて髭をなびかせる者|西條奈加

ケイチャン

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【2022年35冊目】

今回ご紹介する一冊は、

西條奈加 著

『六つの村を越えて髭をなびかせる者』です。

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【感想】「異文化を、うやまう気持ち」

歴史小説

江戸時代の中ごろ、蝦夷地(北海道)を探検した
実在の冒険家、最上徳内(もがみ とくない)の物語です

アイヌと聞いてみなさんは何を思うでしょうか
人気マンガの『ゴールデンカムイ』を連想する方が多いかも
僕の場合は・・
小学校の学芸会です

アイヌ民族と和人との争いを描いた劇で
同級生の女の子がアイヌの少女を演じ
民族の悲哀をせつせつと独唱しました
その素晴らしいこと

僕の心は彼女に持っていかれ
いまだそのままなんです・・え!?
その同級生の女の子とどうなったかって?
今は僕の妻です笑笑

さて江戸時代といえば
厳しい身分制度で知られています
この中で農民に生まれたのも関わらず
最上徳内は立身出世し武士に取り立てられています
よほど優秀だったんでしょうね

この頃の蝦夷地は
ロシアの南下政策の脅威にさらされていました
危機感を覚えた幕府は調査隊を派遣します
そこに参加する徳内

そこで見たのは
松前藩の圧政に苦しむアイヌの人々の姿です
蝦夷地の発展には彼らの協力が必要と感じ
交流する徳内

そして感じる
アイヌの豊かな精神世界
自然を愛し争いを避ける
その姿に共感を覚える

「異文化を、うやまう気持ち」

奴隷貿易をする西欧諸国と同じ感覚
当時の日本人はそんな気持ちだったのかも知れません
自分達が正しく彼らは野蛮人だという
一方的な思い込みがあったようです
現代でも思い当たることが多々ありますね

アイヌの人々の助けになりたい!
その思いは江戸幕府の政変により潰えます
田沼意次の失脚
松平定信の改革

坊主憎けりゃ袈裟まで憎い
前任者田沼の政策を全否定する定信
蝦夷地開発は中断のみならず
田沼派はクビ、さらには投獄されてしまいます

ああ・・俺たちの蝦夷地探検は無駄であったのか・・

敬愛する上司は獄死し
心が折れる徳内
その彼を立ち直らせるのは
愛する妻であった

もはや歴史小説の大家と呼んで遜色ない西條奈加
今作も史実と人間ドラマを絶妙に織り込んで
幾何学模様が目を引くアットゥシのように
美しい物語を仕上げています

遥か彼方に消えてしまった
アイヌの文化に
あなたも思いをはせることでしょう

作品紹介(出版社より)

直木賞作家の新たな到達点!

 江戸時代に九度蝦夷地に渡った実在の冒険家・最上徳内を描いた、壮大な歴史小説。

 本当のアイヌの姿を、世に知らしめたい――

 時は江戸中期、老中・田沼意次が実権を握り、改革を進めていた頃。幕府ではロシアの南下に対する備えや交易の促進などを目的に、蝦夷地開発が計画されていた。

 出羽国の貧しい農家に生まれながら、算学の才能に恵まれた最上徳内は、師の本多利明の計らいで蝦夷地見分隊に随行する。そこで徳内が目にしたのは厳しくも美しい北の大地と、和人とは異なる文化の中で逞しく生きるアイヌの姿だった。イタクニップ、少年フルウらとの出会いを通して、いつしか徳内の胸にはアイヌへの尊敬と友愛が生まれていく……。

 松前藩との確執、幕府の思惑、自然の脅威、様々な困難にぶつかりながら、それでも北の大地へと向かった男を描いた著者渾身の長編小説!

作品データ

タイトル:『六つの村を越えて髭をなびかせる者』
著者:西條奈加
出版社:PHP研究所
発売日:2022/1/12

作家紹介

西條奈加(さいじょう・なか)

1964年北海道生れ。 都内英語専門学校卒業。
2005年『金春屋ゴメス』で「日本ファンタジーノベル大賞」大賞を受賞。
2012年『涅槃の雪』で中山義秀文学賞受賞。
2015年『まるまるの毬』で吉川英治文学新人賞受賞。
2021年『心淋し川』で直木賞を受賞。
人情味溢れる時代小説から現代小説まで、幅広い作品で読者の支持を得ている。

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西條奈加の作品紹介

『烏金』(2007/7/1)
『金春屋ゴメス』(2008/9/30)
『御師弥五郎―お伊勢参り道中記』(2010/10/29)
『無花果の実のなるころに 』(2011/2/2)
『みやこさわぎ(お蔦さんの神楽坂日記)』(2019/7/11)
『はむ・はたる』 (2012/03/20)
『善人長屋』(2012/10/01)
『三途の川で落しもの』(2013/6/27)
『いつもが消えた日(お蔦さんの神楽坂日記)』(2013/11/28)
『涅槃の雪』 (2014/08/20)
『四色の藍』(2014/11/07)
『世直し小町りんりん』(2015/5/15)
『千年鬼』(2015/08/15)
『閻魔の世直し―善人長屋―』(2015/10/01)
『上野池之端 鱗や繁盛記』( 2016/10/01)
『みやこさわぎ(お蔦さんの神楽坂日記)』(2016/10/29)
『まるまるの毬』(2017/06/15)
『六花落々』(2017/10/12)
『銀杏手ならい』(2017/11/14)
『ごんたくれ』(2018/01/20)
『秋葉原先留交番ゆうれい付き』(2018/04/25)
『大川契り―善人長屋―』(2018/07/01)
『九十九藤』(2018/09/20)
『睦月童』(2018/12/28)
『亥子ころころ』(2019/06/26)
『刑罰0号』(2020/2/7)
『わかれ縁』(2020/2/21)
『猫の傀儡』(2020/05/20)
『心淋し川』(2020/09/10)
『隠居すごろく』(2022/02/22)
『無暁の鈴』(2021/04/13)
『曲亭の家』(2021/4/15)
『雨上がり月霞む夜』(2021/11/25)
『隠居すごろく』(2022/02/22)
『千両かざり―女細工師お凜』(2020/09/29)
『無暁の鈴』(2021/04/13)
『永田町小町バトル』(2021/6/4)
『婿どの相逢席』(2021/06/29)
『せき越えぬ』(2021/09/29)
『雨上がり月霞む夜』(2021/11/25)
六つの村を越えて髭をなびかせる者』(2022/01/11)

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