【感想】『夜が明ける』西加奈子|なぜ助けを求められないのだろうか?

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夜が明ける|西加奈子

ケイチャン

ケイチャン

【2022年16冊目】

今回ご紹介する一冊は、

西加奈子 著

『夜が明ける』です。

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【感想】「なぜ助けを求められないのだろうか?」

重いそして苦しい現代小説

2人の主要人物
俺とアキ

名前を明かされない、俺
何不自由ない生活を
高校時代に父が死に
失ってしまう
彼の視点から物語は進みます

苦労して大学を卒業した
俺が就職したのは映像制作会社
ブラック企業の筆頭に挙げられる
業界ですね
そこでは凄まじい加重労働と
パワハラ・モラハラが待っていた

「なぜ助けを求められないのだろうか?」

容貌怪異な、アキ
高身長ながらアンバランス
見るものを不穏な気持ちに
させる彼は1人だった
俺と出会うまでは

母子家庭で育ったアキ
精神的に不安定な母による
虐待と貧困により
アキは他者とバランスがとれた
関係を築けません

そんな2人を高校時代に結びつけたのは
フィンランドの映画俳優アキ・マケライネン
俺がアキにかけた『お前はアキ・マケライネンだ』
その言葉が全く異質な2人の友情の始まりだった

この2人のキャラクターが
僕には合わなくて苦痛でした・・
まず主人公の『俺』が嫌いなタイプです
なんでも自分で解決しようとする
ゴミを捨てない、嫉妬深い、自意識が高い
・・ああ、嫌だ会社で一緒に仕事したくないです

アキはその存在が異様すぎて
そばに居られない感じです

その2人に共通するのが
僕は父性の不在だと感じました
子供時代に社会と家庭の窓口となる父
それを失ったために
『俺』は盲目的に会社に従い
共依存のような状態となります
アキを受け入れる場所は少なく
そしてすぐに失ってしまう

この2人と対照的に描かれるのが
2人の女性です

高校時代の同級生、遠峰
極貧家庭で育ち
それでも明るさを失わない
上手に漫画を書く女の子

カフェでする
笑顔についての会話が
その裏に隠された
劣等感、みじめさ、哀れが
鋭く僕らを抉ります

会社後輩、森
社長や上司にもキチンと
自分の意見を言う彼女
強豪バレー部で培った
ド根性で仕事する

挫折し部屋に籠る『俺』を
連れ出して語る長い会話が
平気なふり
見ていないふり
空気を読むふりしている
僕らを張り飛ばすように
強く優しく叱咤激励します

森ちゃん・・かっけー!
彼女が僕らの代弁者となり
この子供時代からずっと
勝ち負けの勝負を強いるような
今の社会に対して、そうじゃないだろ
生きるって勝ち負けじゃないだろ!
と叫んでくれます

あなたも苦しいときに
ちゃんと助けを求められますか

作品紹介(出版社より)

自分が「助けてもらう」側であることが悔しかった。

15歳の時、高校で「俺」は身長191センチのアキと出会った。 普通の家庭で育った「俺」と、母親にネグレクトされていた吃音のアキは、 共有できることなんて何一つないのに、互いにかけがえのない存在になっていった。

大学卒業後、「俺」はテレビ制作会社に就職し、アキは劇団に所属する。しかし、焦がれて飛び込んだ世界は理不尽に満ちていて、少しずつ、俺たちの心と身体は壊れていった……。

思春期から33歳になるまでの二人の友情と成長を描きながら、 人間の哀しさや弱さ、そして生きていくことの奇跡を描く、感動作!

作品データ

タイトル:『夜が明ける』
著者:西加奈子
出版社:新潮社
発売日:2021/10/20

電子書籍はこちら↓

作家紹介

西 加奈子(にし・かなこ)

1977年イランのテヘラン生れ。エジプトのカイロ、大阪で育つ。
2004年『あおい』でデビュー。
2005年1 匹の犬と5人の家族の暮らしを描いた『さくら』を発表、ベストセラーに。
2007年『通天閣』で織田作之助賞を受賞。
2013年『ふくわらい』で河合隼雄物語賞受賞。
その他の小説に『窓の魚』『きいろいゾウ』『うつくしい人』『きりこについて』『炎上する君』『円卓』『漁港の肉子ちゃん』『地下の鳩』『ふる』など多数。

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西加奈子の作品紹介

『あおい』(2007/6/6)
『さくら』(2007/12/4)
『きいろいゾウ』(2008/3/11)
『通天閣』(2009/12/9)
『しずく』(2010/1/13)
『こうふく みどりの』(2011/4/6)
『こうふく あかの』(2011/5/10)
『窓の魚』(2010/12/24)
『うつくしい人』(2011/8/4)
『きりこについて』(2011/10/25)
『炎上する君』(2012/11/22)
『白いしるし』(2013/6/26)
『円卓』(2013/10/10)
『漁港の肉子ちゃん』(2014/4/10)
『地下の鳩』(2014/6/10)
『ふくわらい』(2015/9/7)
『ふる』(2015/11/6)
『舞台』(2017/1/13)
『サラバ!  上』(2017/10/6)
『まく子』(2019/2/12)
『i』(2019/11/6)
『おまじない』(2021/3/12)
『サムのこと 猿に会う』(2020/3/6)
夜が明ける』(2021/10/20)

■絵本
『きいろいゾウ』(2006/7/25)
『めだまとやぎ』(2012/10/30)
『きみはうみ (Switch library)』 (2015/11/20)

■エッセイ
『ミッキーたくまし』(2009/6/1)
『ミッキーかしまし』(2007/10/1)
『この話、続けてもいいですか。』(2011/11/9)
『ごはんぐるり』(2016/2/10)
『まにまに』(2019/2/23)

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