【感想】『殺人者の白い檻』長岡弘樹|一抹の疑惑がある限り、犯人を憎み切れない

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殺人者の白い檻|長岡弘樹

ケイチャン

ケイチャン

【2022年145冊目】
今回ご紹介する一冊は、
長岡弘樹 著
『殺人者の白い檻』です。

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【感想】「一抹の疑惑がある限り、犯人を憎み切れない」

硬派な医療ミステリー小説

もしも憎き親の仇の生命を
自分が握ることになったら
あなたならどうする?

僕なら迷わずヤっちゃいますね
ええ、親や子の仇など
絶対に許しません!

休職中の医師の尾木敦也は
復帰依頼を断れず
手術の執刀をとるのだが
患者の正体を知り驚愕する

彼の前に開頭された脳を晒す患者は
6年前に両親を殺した死刑囚であった

父母を殺害されてから
虚無感に囚われる尾木医師
定期的に精神を病み
酒に逃げたりしています
平穏を壊した犯人が憎い・・

仕事の熱意も奪われ
恋人もいない40代後半となり
人生に疲れてきたその時
憎き親の仇が目の前に現れた

「一抹の疑惑がある限り、犯人を憎み切れない」

運命か偶然なのか
犯人の命を握ってしまった尾木医師
しかし彼は復讐に走ることはなかった
それは医師としての使命感と
犯人が殺人の事実を否認しているからです

犯行の状況が、どうもおかしい・・

医師として犯人に接するうちに
徐々に裁判記録と整合しない事実が
浮かび上がってきます
そして1人の違う犯人像を結ぶ

だがそれは尾木がどうしても
認めたくない人物だった
再び犯人の生殺与奪を握ることとなる
尾木医師のとる選択とは?

人気の『教場シリーズ』を書く長岡弘樹
硬いんですね笑
まるで真っ直ぐに突き進む
放たれた矢のような展開です

寄り道なしのゆえに
一気に物語に入っていけます
これが長岡弘樹の魅力でしょう

倫理と感情が対立したとき
あなたはどちらを
選びますか?

作品紹介(出版社より)

父母を殺した死刑囚、あなたならその命、救えますか?

刑務所のすぐ隣という、特殊な環境に立地する総合病院に勤務する腕の良い脳外科医の尾木敦也。彼は六年前に父母を強盗に殺害されて以来、精神的に不安定になり深刻なスランプに陥っていた。そんなある日、刑務所からクモ膜下出血で搬送されてきた「スペ患」の執刀を、院長命令で担当することになる。緊急開頭手術で命を救うことはできたものの、スペ患の正体が両親の命を奪った死刑囚・定永宗吾だったことを知り、尾木は懊悩と悔恨の迷路に彷徨い込む。そして定永は、逮捕と死刑の判決以降も自身の犯行を一貫して否認していた。術後のリハビリを通して、尾木と妹の看護師長・菜々穂は、定永という人間と六年前の事件に、改めて向き合うことになるのだが……。

憎き犯罪者と医師は、どう向き合えば良いのか? 犯罪者の生命は軽いのか、あるいは全ての人間と等しく重いものなのか? 事件の真実と真相はどこにあるのか? 死刑の意義、犯罪更生の理非、医師の倫理、それぞれの命題を通して生命の「軽重」の問いを突きつける、究極の医療ミステリ。

作品データ

タイトル:『殺人者の白い檻』
著者:長岡弘樹
出版社:KADOKAWA
発売日:2022/7/29

作家紹介

長岡弘樹(ながおか・ひろき)

1969年山形県生まれ。筑波大学第一学群社会学類卒業。
2003年「真夏の車」で小説推理新人賞を受賞し、2005年「陽だまりの偽り」でデビュー。
2008年「傍聞き」で第61回日本推理作家協会賞短編部門を受賞。
2013年「教場」で「週刊文春ミステリーベスト10」1位、「本屋大賞」6位などベストセラーとなった。
他の著書に『線の波紋』『波形の声』『群青のタンデム』がある。

長岡弘樹の作品紹介

『陽だまりの偽り』(2005年7月)
『傍聞き』(2008年10月)
『線の波紋』(2010年10月)
『教場』(2013年6月)
『波形の声』(2014年2月)
『群青のタンデム』(2014年9月)
『教場2』(2016年2月)
『赤い刻印』(2016年5月)
『白衣の嘘』(2016年9月)
『時が見下ろす町』(2016年12月)
『血縁』(2017年3月)
『教場0– 刑事指導官・風間公親』(2017年10月)
『にらみ』(2018年3月)
『道具箱はささやく』(2018年6月)
『夏の終わりの時間割(救済SAVE)』(2018年11月)
『119』(2019年6月)
『風間教場』(2019年12月)
『緋色の残響』(2020年3月)
『つながりません– スクリプター事件File』(2020年6月)
『幕間のモノローグ』(2021年3月)
『巨鳥の影』(2021年7月)
『教場X 刑事指導官・風間公親』(2021年8月)
殺人者の白い檻』(2022年7月)

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