ケイチャン
【2022年128冊目】
今回ご紹介する一冊は、
町田そのこ 著
『宙ごはん』です。
もくじ
【感想】「得られないなら、与えればいいんだ」
産みのお母さんと暮らしてみたら
そいつはカスだった・・
2人の母を持つ少女、宙ちゃんが
幼少期から大人になるまでの成長の物語
テーマは家族と贖罪です
小学1年生になるのを期に生みの母
花野(カノ)と暮らすことになった宙ちゃん
暖かい育てのママの家庭から離れることの不安は的中します
幼少期から肉親の愛情を受けずに育った花野
自分の娘にどう接して良いのかわかりません
人気イラストレイターで仕事に夢中
他事に手も気もまわらない
結果花野は宙ちゃんを放置し、人任せにしてしまう
それが金髪にピアス、腕に彫られたタトゥーがやんちゃな
佐伯さんだった
赤の他人なのに肉親のような愛情を注がれる宙ちゃん
佐伯さんがパパになってくれたらいいのに・・
けれども物事はそう都合よくいってくれない
花野は一回り以上年上の男性に夢中だったのです
自分だけをかまってくれる母を求めているのに
花野は自分のことだけで手一杯
報われない宙ちゃんが可哀そうです
しかしそんな宙ちゃんに佐伯さんが
ふわふわのパンケーキを作ってくれる
自分だけのために手をかけて時間をかけて
作ってくれた料理に宙ちゃんの心は束の間満たされる
人を幸せにしてくれるごはん
宙ちゃんは佐伯さんから料理を習うことにするのでした
本作に出てくる大人たちは
みんなどこかに欠陥を持った
完璧には程遠い人ばかり
そしてそんな大人たちに振り回されるのが
無力な子供たちです
宙の幼少期から大人になるまでと
長い時間を描いていますが
宙の視点からみる花野たち大人の様子が
成長するにつれて変わっていきます
絶対的な親が、実はただフツーの人間だった
それに気が付き、フツーの人間の親を
受け入れることが大人になるってことなのでしょう
悲しい出来事が次々と起こる本作ですが
登場人物はみな優しい
そして打ちのめされても立ち上がる
強さがありました
あなたもきっと誰かのために
ごはんを作ってあげたくなる
そんな物語です
作品紹介(出版社より)
この物語は、あなたの人生を支えてくれる
宙には、育ててくれている『ママ』と産んでくれた『お母さん』がいる。厳しいときもあるけれど愛情いっぱいで接してくれるママ・風海と、イラストレーターとして活躍し、大人らしくなさが魅力的なお母さん・花野だ。二人の母がいるのは「さいこーにしあわせ」だった。
宙が小学校に上がるとき、夫の海外赴任に同行する風海のもとを離れ、花野と暮らし始める。待っていたのは、ごはんも作らず子どもの世話もしない、授業参観には来ないのに恋人とデートに行く母親との生活だった。代わりに手を差し伸べてくれたのは、商店街のビストロで働く佐伯だ。花野の中学時代の後輩の佐伯は、毎日のごはんを用意してくれて、話し相手にもなってくれた。ある日、花野への不満を溜め、堪えられなくなって家を飛び出した宙に、佐伯はとっておきのパンケーキを作ってくれ、レシピまで教えてくれた。その日から、宙は教わったレシピをノートに書きとめつづけた。
全国の書店員さん大絶賛! どこまでも温かく、やさしいやさしい希望の物語。
作品データ
タイトル:『宙ごはん』
著者:町田そのこ
出版社:小学館
発売日:2022/5/27
作家紹介
町田そのこ (まちだ・そのこ)
1980年生れ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。
2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。
他著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『星を掬う』などがある。
町田そのこの作品紹介
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(2017年8月)
『ぎょらん』(2018年10月)
『うつくしが丘の不幸の家』(2019年11月)
『52ヘルツのクジラたち』(2020年4月)
『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』(2020年7月)
『星を掬う』(2021年10月)
『コンビニ兄弟2―テンダネス門司港こがね村店―』(2021年12月)
『宙ごはん』(2022/05/27)