ケイチャン
【2022年113冊目】
今回ご紹介する一冊は、
鈴木涼美 著
『ギフテッド』です。
もくじ
【感想】「美しさはギフトなのか、それとも呪いなの?」
母が死にに来た
水商売のホステスと風俗嬢
売るものが酒か肉体かの違いですが
『美しさ』が価格に反映するところは
同じではないでしょうか
17歳で家出した娘は水商売で暮らしてきた
家出した遠因となったのが
母にカラダを焼かれたことでした
29歳になった今
長年の飲酒と喫煙そして不摂生でゆっくりと体が
蝕まれているようすです
そして心も・・疲れ乾ききっている
それは人に期待することを諦めて
自分を大切にすることを止めたような日々です
そんななか母がやってきた
たった2週間一緒に過ごし病院に帰っていった母
だがその母との日々は緊迫したものだった
聞くべきことを聞けない母娘の関係
ねえお母さんはなんでわたしの肩を焼いたの?・・
と、聞けない
そして母の生命が尽きる少し前
娘は母の過去を知ることになる
そして自分を焼いた意味をも
それは娘を美しくするためであった
作者の鈴木涼美は慶応大学卒、日経記者という
経歴を持つ才媛ですが、いっぽうでAV女優という
異色の過去を持ちます
美しい容姿のあやうさと儚さを
一番に理解しているのではないでしょうか
また美しいがゆえに持たざるを得ないプライドが
彼女たちを縛る呪いのようにも思えました
作られ整えられた夜の街に咲く花々
そこに飾られる胡蝶蘭のようです
ところで胡蝶蘭って花が終わったあとも
適切に育てればもう一度花が咲くそうですね
あなたは花が終わった後の胡蝶蘭を
とっとと捨ててしまいますか?
それとも手間暇かけて世話をして
もう一度花を咲かせようとしますか?
作品紹介(出版社より)
第167回芥川賞候補作にして、『「AV女優」の社会学』『身体を売ったらサヨウナラ』などで知られる鈴木涼美の、衝撃的なデビュー中編。歓楽街の片隅のビルに暮らすホステスの「私」は、重い病に侵された母を引き取り看病し始める。母はシングルのまま「私」を産み育てるかたわら数冊の詩集を出すが、成功を収めることはなかった。濃厚な死の匂いの立ち込める中、「私」の脳裏をよぎるのは、少し前に自ら命を絶った女友達のことだった――「夜の街」の住人たちの圧倒的なリアリティ。そして限りなく端正な文章。新世代の日本文学が誕生した。
作品データ
タイトル:『ギフテッド』
著者:鈴木涼美
出版社:文藝春秋
発売日:2022/7/12
作家紹介
鈴木 涼美(すずき・すずみ)
1983年、東京都生まれ。 慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。 大学在学中にAV女優としてデビューし、東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社に勤務。 東京本社地方部都庁担当、総務省記者クラブ、整理部などに所属。
著書に『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『おじさんメモリアル』『オンナの値段』『女がそんなことで喜ぶと思うなよ』、『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』、『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』など。近著に『非・絶滅男女図鑑』がある。
鈴木 涼美の作品紹介
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 2013/06/24
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 2014/11/26
『愛と子宮に花束を ~夜のオネエサンの母娘論~』 2017/05/25
『オンナの値段』 2017/12/08
『女がそんなことで喜ぶと思うなよ ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』 2019/06/05
『ニッポンのおじさん』 2021/04/21
『ギフテッド』 2022/07/12