【本の感想】『雷と走る』千早茜|野生の怖さと、美しさ

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千早茜『雷と走る』を読んだ感想と野菜タンメン

ケイチャン

ケイチャン

【2024年159冊目】

今回ご紹介する一冊は、

千早茜著

雷と走るです。

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【感想】「野生の怖さと、美しさ」

犬小説

唯一無二だった、私の犬
『虎』と別れを選んだ私は
大きな何かを失ったんだ
引き裂かれた魂の物語です

プーくん

プーくん

犬に愛される人って、いるよね

ケイチャン

ケイチャン

みなさんは子供の頃に
犬を飼っていましたか?
僕は猫だったんですが
あの温もり、甘やかな匂いを
今も鮮明に思い出すことがあります
幼い時を一緒に過ごした動物は
特別ですよね

つながれない、犬たち

アフリカに赴任する一家
治安の悪いこの国では
番犬が欠かせません
何頭かの子犬を買います

獰猛な番犬
ローデシアン・リッジバック
背毛が雷のように逆立つ1頭を
まどかちゃんは『虎』と名付ける

これは、私の犬!

まどかちゃんは幼いながら
主人として虎をしつけ
友人として遊び
戦友のように庭をパトロールします

場面は変わって、大人になったまどかさん
優しい恋人と過ごしながらも
心には大きな穴が開いているよう
埋めるようにランニングに打ち込む

物語は犬たちと過ごした
アフリカでの子供時代と
どこか空虚さを漂わせる
大人になった今を
交互に描きながら進みます

「野生の怖さと、美しさ」

アフリカで大きな邸宅に住み
広いお庭で遊ぶ日々
けど1歩自宅から出ればもう
危険地帯
大きな鳥かごで過ごす少女時代

虎たち犬と育つ日々が
輝いているよう

ケイチャン

ケイチャン

『バッタ祭り』なんてもう
めちゃくちゃ楽しそうです

どんどん大きくなる犬たちは
すぐに成犬となり
まどかちゃんのママや弟は
怖がります

犬が私たちを襲うわけないのに・・

しかしそれは信頼関係を
築けた者だけが感じること
やがてある事件が起こり
母と弟は犬たちを恐れるようになる

そして日本の帰国が決まったとき
まどかちゃん以外の家族は
犬を連れて帰ろうとしませんでした
・・こんな野獣は日本に住めないよ

連れて帰るなら、責任をとりなさい
父にそう言われて悩む、まどかちゃん
日本で犬を飼うには制約がある
虎にリードを付けれるだろうか

わたしの犬を、捨てる

淡々と描かれる虎との別れが
逆にグッと胸に迫ります
唯一無二の犬を、捨てる
大きなトラウマを背負う

大人になったまどかさんは
心を許すことに慎重になっているようす
辛い別れがあるならば
いっそ手に入れなければいい

けれど手を伸ばさなければ
虎との出会いもなかったことでしょう
まどかさんは恋人から伸ばされた手を
掴むことにするのでした

唯一無二の犬との
出会いの喜びと、別れの哀しみ

ケイチャン

ケイチャン

動物の野性とどう向き合うかという
テーマも良く、心に響きました

ケイチャン

ケイチャン

あなたの犬は(猫も)
どんな犬(猫)でしたか?

作品紹介(出版社より)

幼い頃海外で暮らしていたまどかは、番犬用の仔犬としてローデシアン・リッジバックの「虎」と出会った。唯一無二の相棒だったが、一家は帰国にあたり、犬を連れて行かない決断をして――。

作品データ

タイトル:『雷と走る』
著者:千早茜
出版社:河出書房新社
発売日:2024/8/22

作家紹介

千早 茜(ちはや・あかね)

1979年北海道生まれ。
2008年『魚神』で小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。
2009年に同作で泉鏡花文学賞受賞。
2013年『あとかた』で島清恋愛文学賞受賞。
2021年『透明な夜の香り』で渡辺淳一賞を受賞。
他の著書に『からまる』『眠りの庭』『男ともだち』『クローゼット』『正しい女たち』『犬も食わない』(尾崎世界観と共著)『鳥籠の小娘』、エッセイに『わるい食べもの』などがある。

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千早 茜の作品紹介

『魚神 』(2009年1月)
『おとぎのかけら 』(2010年8月)
『からまる』(2011年2月)
『あやかし草子』(2011年8月)
『森の家』(2012年7月)
『桜の首飾り』(2013年2月)
『あとかた』(2013年6月)
『眠りの庭』(2013年11月)
『男ともだち』(2014年5月)
『西洋菓子店プティ・フール』(2016年2月)
『夜に啼く鳥は』(2016年8月)
『ガーデン』(2017年5月)
『人形たちの白昼夢』(2017年9月)
『クローゼット』(2018年2月)
『正しい女たち』(2018年6月)
『犬も食わない』(2018年10月)
『わるい食べもの』(2018年12月)
『鳥籠の小娘』(2019年1月)
『神様の暇つぶし』(2019年7月)
『さんかく』(2019年10月)
『透明な夜の香り』(2020年4月)
『しつこく わるい食べもの』(2021年2月)
ひきなみ』(2021年4月)
『胃が合うふたり(2021年10月)
『こりずに わるい食べもの』(2021年10月)
しろがねの葉』(2022年9月)
赤い月の香り』(2023年4月)
マリエ 』2023/08/25
グリフィスの傷』2024/4/26
雷と走る』2024/8/22

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