ケイチャン
【2024年118冊目】
今回ご紹介する一冊は、
筒井康隆 著
『旅のラゴス』 です。
もくじ
【感想】「あかね色の空は、夕焼けなのか朝日なのか・・」
荒れた世界を男は旅する
北から南へと
失われた知識を求めて・・
SF世界の旅路を描く物語です
舞台は地球ではないどこかの惑星です
人々は中世ぐらいの生活をしていますが
大きく違うのは特殊能力が使えること
第1章のクライマックスは集団転移
テレポーテーションです
南へ南へと旅を続ける男
ラゴス
遊牧民と旅し
各地で事件に会い
親しい女性が出来ても
やがて南の目的地で
求めていた書物を見つける
だがこれは旅のなかば
本を読み知識を蓄えて
荒れたこの世界の
情景描写が美しい
大空のもとに広がる
大地が見えるようです
無法の世界で生きる人たち
盗賊に襲われ奴隷狩りに
あうこともある緊迫した世界
そこで懸命に生きながらも
楽しみを見つける姿が力強い
魅力的な女性たち
ラゴスを愛する女性
いずれ旅立つ男を愛するという
せつない恋情にググっときます
語り過ぎない簡素な文章で綴られ
その余白部分が味わい深い
何人かの女性と事実上の
夫婦となるラゴスですが
常に心の中にデーデという少女が
いるところが人の複雑さ
愛の不思議さを表しています
プーくん
愛って、難しい
故郷に帰ってしばらくして
ラゴスは気付きます
まだ旅は終わっていない
故郷ですら旅の途中なのだ、と
ケイチャン
うう、カッコ良すぎる!
故郷に錦を飾り
愛する家族もいて
親しい友人もいる
その全てを振り切って
朝焼けなのか黄昏なのか
光に包まれたような世界を
旅する男を描くSFロードノベル
ケイチャン
ひとつの人生を読み切った感のある
余韻が止まない読後でした
ケイチャン
長く読み継がれるだろう
傑作であると思います
作品紹介(出版社より)
北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。
作品データ
タイトル:『旅のラゴス』
著者:筒井康隆
出版社:新潮社
発売日:1994/3/30
作家紹介
筒井康隆(つつい・やすたか)
1934年、大阪市生れ。同志社大学卒。
1960年、弟3人とSF同人誌〈NULL〉を創刊。この雑誌が江戸川乱歩に認められ「お助け」が〈宝石〉に転載される。
1965年、処女作品集『東海道戦争』を刊行。
1981年、『虚人たち』で泉鏡花文学賞受賞。
1987年、『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞受賞。
1989年、『ヨッパ谷への降下』で川端康成文学賞受賞。
1992年、『朝のガスパール』で日本SF大賞をそれぞれ受賞。
1996年12月、3年3カ月に及んだ断筆を解除。
1997年、パゾリーニ賞受賞。
2000年、『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。
2002年、紫綬褒章受章。
2010年、菊池寛賞受賞。
2017年、『モナドの領域』で毎日芸術賞を受賞。
他に『家族八景』『敵』『ダンシング・ヴァニティ』『アホの壁』『現代語裏辞典』『聖痕』『世界はゴ冗談』『ジャックポット』等著書多数。
筒井康隆の作品
『笑うな』1975/9/1
『家族八景』1975/3/3
『七瀬ふたたび』1979/12/1
『エディプスの恋人』1977/10/1
『虚航船団』1984/5/1
『文学部唯野教授』1990/1/26
『パプリカ』1993/9/1
『残像に口紅を』1989/4/1
『ロートレック荘事件』1990/9/1
『旅のラゴス』1994/3/30
『時をかける少女』2006/5/25
『モナドの領域』2015/12/3
『にぎやかな未来』2016/6/17
『カーテンコール』2023/11/1
…など多数