ケイチャン
【2023年33冊目】
今回ご紹介する一冊は、
佐藤厚志 著
『荒地の家族』です。
もくじ
【感想】「植木も道具も家族も、メンテナンスが大事でしょ!」
何度経験しても
失うことには慣れやしない・・
妻を喪失した男の葛藤を描く
家族の物語です
黙々と働く植木屋の男が主人公
舞台は東北地方の現代
大震災で家財を失い
その後、病で妻を失う
再起のために迎えた後妻は
出ていってしまった
2度妻を失うことになった
ひとり親方の祐治(ゆうじ)さん
自分・・不器用っス、的な
妻や子と上手くやれないタイプの
職人さんです
結果、仕事に逃げてしまう
2度目の妻に迎えた女性に
ある日突然ひと言もなく
家を出ていかれたことに
ものすごいショックを受ける祐治
何故!どうして?
俺の何が悪かったんだ!?
教えてくれよッ
しかしその後妻は
会うことはもちろん
出て行った理由すら
説明してはくれません・・
まるで祐治を罰するが如くに
物語は
妻を失った悲しみ
妻に去られた後悔
子供と上手くやれない葛藤
そんなこんなで
黙々と仕事に逃げる
くよくよしたおっちゃんの
悩む日々が綴られます
暗いんだよな~
やっぱり人は明るくないと
周りの人も逃げちゃうよね
と、思いました
だが家族だけは違う
くよくよする祐治に
突き放すように寄り添う母
距離をとりつつも一緒にいる子ども
ほらっ、君にはちゃんと
家族がいるじゃないか!
と、その幸せに気付かせて
あげたくなりました
仕事してりゃ男は許される
そんな昭和時代は遥か昔
寄り添い合い
語り合い
守り合い
荒地を進むキャラバン隊のように
支え合わねば
厳しい令和時代を
乗り越えることは出来ないのでしょう
しかし時が心を癒す
時間をかけながら
喪失から再生へと向かう
家族の物語でした
あなたの家族は
戦場で安心して
背中を任せられる
戦友ですか?
作品紹介(出版社より)
元の生活に戻りたいと人が言う時の「元」とはいつの時点か――。40歳の植木職人・坂井祐治は、あの災厄の二年後に妻を病気で喪い、仕事道具もさらわれ苦しい日々を過ごす。地元の友人も、くすぶった境遇には変わりない。誰もが何かを失い、元の生活には決して戻らない。仙台在住の書店員作家が描く、止むことのない渇きと痛み。
作品データ
タイトル:『荒地の家族』
著者:佐藤厚志
出版社:新潮社
発売日:2023/1/19
作家紹介
佐藤厚志(さとう・あつし)
1982年宮城県仙台市生まれ。東北学院大学文学部英文学科卒業。仙台市在住、丸善 仙台アエル店勤務。
2017年第49回新潮新人賞を「蛇沼」で受賞。
2020年第3回仙台短編文学賞大賞を「境界の円居(まどい)」で受賞。
2021年「象の皮膚」が第34回三島由紀夫賞候補。
2023年「荒地の家族」で第168回芥川龍之介賞を受賞。
佐藤厚志の作品紹介
『象の皮膚』(2021/6/28)
『荒地の家族』(2023/1/19)