【本の感想】『青の純度』篠田節子|青いのは、海の表面だけ

【2025年115冊目】
今回ご紹介する一冊は、
篠田節子 著
『青の純度』です。
【感想】「青いのは、海の表面だけ」
一世を風靡したマリンアート絵画が
また復活するのか!?
かつて大衆を魅了した青い海の絵に
隠された秘密を暴く、問題作です
青過ぎるほどに、青い海
透明にはじける、波
精密に描かれた、海洋生物たち
クリスチャン・ラッセ・・間違えた!笑
本作ではジャンピエール・ヴァレーズの絵です
仕事一直線の美術編集者の真由子さんは
うらさびれたリゾートホテルで見かけた
ヴァレーズの絵に心を動かされました
いっぱしの美術専門家なら見向きもしない
大衆用の絵画なのに・・
さらにヴァレーズの絵を貶めたのは
展示会商法とかデート商法とかで
強引かつ極めて高い価格で売られて
いたということでした
しかしこの絵画に感動し
心が動いたということも
たしかな事実です
ヴァレーズの美術書を出してみようか
そう閃いた真由子に
再びヴァレーズの展覧会が催される
情報が入るのだ
もう終わった画家じゃないの?
なぜ今再び復活するんだろう?
数々の疑問が重なりゆくなか
ついに真由子はヴァレーズを追い
ハワイを訪れるのでした
ハワイに降り立った真由子は
ヴァレーズさんに会おうと
コンタクトするんですが
・・どうも、おかしいよ??
やがて真由子はヴァレーズの
妻という日本人女性に追いつく
しかし彼女の語る言葉と表情の
落差に不信感を募らせる
そして真由子はついに
仕組まれたヴァレーズ商法の真実を
突き止めるのでした

いやホント面白かったです
迫真のミステリーパートに
ドキドキしたのは言うに及ばず
社会派作家の篠田節子らしく
各所に社会問題が提起されています
展示会商法やデート商法
バブル期の女性管理職登用
女性管理職のガラスの天井
などなど

う~ん、と考えさせられました

ハワイの日系移民者の歴史も興味深く読めました
バブルに踊った者たちの
末路も興味深い
再びバブルを蘇させようとする者
後悔する者
あきらめない者

名声・金・欲望の暗い思いが重かったです
そんな中で純粋にヴァレーズの
絵を愛する者たちの姿に
清涼感を覚えました
騙されて高く買ったって
美術家に評価されなくたって
好きなものは、好き!
それの何が悪いのさ?

数々の謎を解き明かされる真相にビックリ!
しかしマリン・アート絵画は
純粋に美しいという物語でした

深く人の心の奥に潜っていくような篠田節子の作品が僕は大好きです
作品紹介(出版社より)
その「青さ」は、本物か――?
最年少で管理職となり、仕事一筋で駆け抜けてきた美術系編集者・有沢真由子。
五十歳の誕生日を迎え、つかの間の息抜きに訪れた古びたリゾートホテルで、彼女は一枚の絵画と出会う。
ジャンピエール・ヴァレーズ――バブルの時代に華やかな海中画で大衆の心を掴み、一方で美術界からは一切相手にされなかった、“終わった画家”。
かつて鼻で笑い飛ばしていた彼の絵に、不覚にも安らぎを覚えた真由子だったが、ほどなくして都内のホテルでヴァレーズの原画展が行われるという情報を得る。なぜ今再び、ヴァレーズなのか?
かつての熱狂的ブームの正体とは?違和感を手繰り、真由子は単身ハワイの地を訪れるが――。
煌びやかな「バブル絵画」の裏側に潜んだ底知れぬ闇に迫る、
渾身のアート×ミステリー大長編!
作品データ
タイトル:『青の純度』
著者:篠田節子
出版社:集英社
発売日:2025/7/4
作家紹介
東京都生まれ。東京学芸大学卒。
1990年『絹の変容』で第三回小説すばる新人賞を受賞。
1997年『ゴサイタン―神の座―』で第十回山本周五郎賞受。
1997年『女たちのジハード』で第百十七回直木賞を受賞。
2009年『仮想儀礼』で第二十二回柴田錬三郎賞を受賞。
篠田節子の作品
『 絹の変容 』(1993年8月)
『 神の座 ゴサインタン 』(2002年10月)
『 女たちのジハード 』(2000年1月)
『 仮想儀礼・上 』(2008年12月)
『 仮想儀礼・下 』(2011年5月)
『 長女たち 』(2014年2月)
『 ブラックボックス 』(2013年1月)
『 鏡の背面 』(2018年7月)
『 夏の災厄 』(1998年6月)
『 インドクリスタル 』(2014年12月)
『 弥勒 』(2001年10月)
『 夏の災厄 』(2015年2月)
『 聖域 』(2008年7月)
『 神鳥イビス 』(1996年10月)
『 銀婚式 』(2011年12月)
『 となりのセレブたち 』(2015年9月)
『 ハルモニア 』(2001年2月)
『 カノン 』(1999年4月)
『 長女たち 』(2017年9月)
『 田舎のポルシェ 』(2021年4月)
『 コミュニティ 』(2009年7月)
『 はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか 』(2011年7月)
『 冬の光 』(2015年11月)
『 竜と流木』 2016/05/25
『 「森の人(オランウータン)」が食べるブドウの味』 2017/02/27
『 鏡の背面』 2018/07/26
『 肖像彫刻家 2019/03/22
『 介護のうしろから「がん」が来た!』 2019/10/04
『 こうた、もどっておいで 時を経て、二〇二〇』 2020/12/01
『 田舎のポルシェ』 2021/04/15
『失われた岬』 2021/10/29
『セカンドチャンス』 2022/06/29
『ドゥルガーの島』 2023/08/18
『ロブスター』2024/9/28
『青の純度』2025/7/4

