ケイチャン
【2023年145冊目】
今回ご紹介する一冊は、
朝霧咲 著
『どうしようもなく辛かったよ』です。
もくじ
【感想】「友達の価値は役に立つか立たないか、なの?」
著者デビュー作
思春期小説
私たちは一緒だけれど
ぜんぜん違うんだ
ちぐはぐな思いと言葉で交わる
バレー部員の女子中学生を描く
群像劇です
中学校の部活動は、特別なもの
みなさんは中学生の時に
どんな部活をしていましたか?
僕は剣道部でした
楽しかったなあ・・
僕をはじめ、学年指折りの
バカどもが集まった剣道部は
しかし強かったんです
市内の大会を3連覇した時の
全能感と一体感は、忘れられません
ひとつの目標に向かい
練習に明け暮れる日々は
強い絆を結ぶものですよね
・・その絆が、切れてしまったんだ
熱心な顧問の先生の下で
練習に明け暮れる女子バレー部員
しかし3年に進級した時
顧問は他校に移動
代わりにやって来たのは
未経験のデブとハゲの先生だった
え?これはもう・・オワッタ!
案の定、3年の大会は惨敗
あんまりな結果に号泣する部員だが
・・けど私たちの絆は永遠だよね!
8人の女子バレー部員のうち
5人の視点から描かれるのは
中学生の生活は綺麗ごとでは済まない
食うか食われるかのサバイバルであるということ
肥大化するプライド
他者の視線が気になり
特別になりたいけど
目立ちたくない
・・誰か、助けて!
そんな時に必要なのが友達です
でも友達だからって安心は出来ない
だって人は平等ではあり得ないし
どっちが上でどっちが下かって
・・大切だよね
一緒にいても
思いは別々で自分勝手で
交わらないし届かない
でも離れられない
・・だって1人は、怖いから
女子中学生たちの
リアルな生存戦略を描く本作
その原因は『不安』であると思いました
部活に勉強に追い立てられて
狭い巣箱の中でストレスを感じて
仲間内で突き合う雛鳥のようです
損得を越えたところに
本当の友情があると言うのは
幻想なのでしょうか・・
あなたはどう思いますか?
作品紹介(出版社より)
第17回小説現代長編新人賞受賞作
受賞時高校三年生。現在大学一回生。青春の輝きとそこにのびる影、苦み
「特別になりたい」「ルールを破りたい」少女たちの卒業までの日々が、始まった。あらすじ
「特別になりたい」と願う中学生の若菜は、日々、バレー部での練習に明け暮れていた。しかし三年生になると、顧問の異動によってチームは大きく動揺してしまう。若菜の「ある提案」によって落ち着きを取り戻したチームは、最後の大会へ向かうのだが――。
夏から、少女たちは「それぞれの最終学年」に直面することになった。学業優秀な真希、学校を休み続ける愛美、裏と表をうまく使い分ける桜、ルールから逸脱することができないくるみ。部活というつながりを失った少女たちが隠してきた本心、我慢してきた関係性。少女たちの卒業までの日々が、始まった。
作品データ
タイトル:『どうしようもなく辛かったよ』
著者:朝霧咲
出版社:講談社
発売日:2023/9/22
作家紹介
朝霧咲(あさぎり・さき)
2004年愛知県生まれ。
『どうしようもなく辛かったよ』で第17回小説現代長編新人賞を受賞しデビュー。
朝霧咲の作品
『どうしようもなく辛かったよ』2023/9/22