【感想】『世界でいちばん透きとおった物語』杉井光|棺を開けて、死者と対話する

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杉井光『世界でいちばん透きとおった物語』

ケイチャン

ケイチャン

【2023年120冊目】

今回ご紹介する一冊は、

杉井光 著

『世界でいちばん透きとおった物語』です。

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【感想】「棺を開けて、死者と対話する」

ネタバレ厳禁ミステリー

僕を捨てた父の遺稿を探す
嫌いなはずなのに
どうしても読んでみたいのは
なぜ?
仕掛けに満ちた物語です

この作者は
偏執狂にちがいない!

天涯孤独の主人公
不倫の末に生まれた僕は
父に一度も会ったことがなく
母もまた死んでしまった

孤独と寄り添うように生きる
そんな僕に転機が訪れる
それは父の死でした
結局一度も会うことなく
逝ってしまった父

けど小説家だった父に
未発表の小説が残されているらしい
異母兄の依頼で遺作
『世界でいちばん透きとおった物語』
を探す旅にでるのだ

図らずもその旅路は
会うことなく逝ってしまった
父の姿を追い求め
自分の心の中へと続く
階段を降りてゆくようでした

「棺を開けて、死者と対話する」

『世界でいちばん透きとおった物語』
を探すために
父の愛人たちと会い話す
そこで語られる父の姿に
僕の心は揺れてゆく・・

憎むべきはずなのに
憎み切れない

そして本当の父の心を知った時
僕の物語が姿を現すのでした

・・といった本筋が進む中で
着々と進むのが
作者の企みに満ちた
仕掛けです

作中に出てくる
『魔法使いタダ』という本で
読者への挑戦
と言う言葉があります
大ヒントですね笑

読者への挑戦は
冒頭より随所に
仕掛けられている
数々のヒントから
あなたはこの物語の
本質を見抜くことが
出来るでしょうか?

一撃必殺!

ミステリーファンの
心をつらぬく大仕掛けに
ラストシーンを読んだあなたは
きっともう一度、読み直すはずです

作品紹介(出版社より)

大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだが――。予測不能の結末が待つ、衝撃の物語。

作品データ

タイトル:『世界でいちばん透きとおった物語』
著者:杉井光
出版社:新潮社
発売日:2023/4/26

作家紹介

杉井光(すぎい・ひかる)

電撃小説大賞の銀賞を受賞し、2006年電撃文庫『火目の巫女』でデビュー。
その後電撃文庫「神様のメモ帳」シリーズがコミカライズ、アニメ化。
ライト文芸レーベルや一般文芸誌で活躍。
他の著書に「さよならピアノソナタ」シリーズ、「楽園ノイズ」シリーズ、『終わる世界のアルバム』、『蓮見律子の推理交響楽 比翼のバルカローレ』などがある。

杉井 光の作品紹介

『終わる世界のアルバム』 2010/10/25
『神曲プロデューサー』 2013/07/26
『六秒間の永遠』 2015/02/10
『この恋が壊れるまで夏が終わらない』2022/04/26
世界でいちばん透きとおった物語』2023/04/26

…他

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