【感想】『春のこわいもの』川上未映子|ここではない何処かに、急き立てられるのは何故?

ケイチャン
【2022年86冊目】
今回ご紹介する一冊は、
川上未映子 著
『春のこわいもの』です。
【感想】「ここではない何処かに、急き立てられるのは何故?」
なんで表紙がピンクの枕なんでしょうかね?
甘い夢から早く覚めろってことなのか
それとも辛い現実なんか寝てやりすごせってことなのか
さて
2話めの『あなたの鼻がもう少し高ければ』が強烈でした
憧れの整形美人インフルエンサーの会いに行ったトヨちゃんが
彼女の手下にけちょんけちょんに容姿をけなされるシーンは
恐怖でした
それぞれ毛色の異なる6つの物語ですが
僕が共通して感じたのものは
少しでも良くならなければいけない
常に前へ進み、変わらなければいけない
そう時代に急き立てられて
苦悩する主人公たちでした
僕らはなんで現状のままでは、いけないんでしょうか?
美容に、年齢に、孤独に
様々な事象を常にカイゼンを求められ、それを美徳とされる今の世の中
常に走り続けることを要求されるようです
これは苦しい
それぞれの事情で苦悩する主人公たちは
同じ時代に生きる、もう1人の私と言えるでしょう
それにしても川上未映子の文章は素晴らしい
1人称で語られるそれは、友人の心からの独白を聞くようで
息遣いが感じられるようです
絶妙な言葉選びも、天才です
コロナ過の爛漫たる春のように
浮きたつことを咎められて
不安とともに過ごすことを余儀なくされた
今の時代を映す物語たちでした
作品紹介(出版社より)
感染症大流行(パンデミック)前夜の東京――〈ギャラ飲み〉志願の女性、ベッドで人生を回顧する老女、深夜の学校へ忍び込む高校生、親友を秘かに裏切りつづけた作家……。東京で6人の男女が体験する甘美きわまる地獄巡り。これがただの悪夢ならば、目をさませば済むことなのに。『夏物語』から二年半、世界中が切望していた新作刊行!
作品データ
タイトル:『春のこわいもの』
著者:川上未映子
出版社:新潮社
発売日:2022/2/28
作家紹介
川上 未映子(かわかみ・みえこ)
大阪府生まれ。「乳と卵」で芥川賞、『ヘヴン』で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞、『愛の夢とか』で谷崎潤一郎賞、『夏物語』で毎日出版文化賞など受賞歴多数。『夏物語』は英、米、独、伊などでベストセラーとなり、世界40ヵ国以上で刊行が予定されている。世界でもっとも新作が待たれている作家のひとり。他の作品に『すべて真夜中の恋人たち』、『あこがれ』、『ウィステリアと三人の女たち』、『みみずくは黄昏に飛びたつ』(村上春樹との共著)などがある。
川上 未映子の作品紹介
『わたくし率イン歯-、または世界』(2007年7月)
『乳と卵』(2008年2月)
『ヘヴン(2009年9月)
『すべて真夜中の恋人たち』(2011年10月)
『愛の夢とか』(2013年3月)
『あこがれ』(2015年10月)
『ウィステリアと三人の女たち』(2018年3月)
『夏物語』(2019年7月)
『春のこわいもの』(2022年2月)

