ケイチャン
【2022年25冊目】
今回ご紹介する一冊は、
近藤史恵 著
『おはようおかえり』です。
もくじ
【感想】「家族だからこそ、一筋縄ではいかぬ」
実家は和菓子屋
家業があるという気持ちは
自分のルーツとか、よって立つ場所とか
そして少し反発する気持ちなのかも知れません
現代を生きる正反対の姉妹と
43年前に亡くなった曾祖母が綴る
ちょっと不思議で
あるあると共感出来る
家族のお話
高校卒業後、なんとなく跡を継ぐかなぁと
家業の和菓子屋で働く姉、小梅(こうめ)
冒険をしない保守な性格です
自分より容姿も勉強も出来る妹に
ほんのちょっと嫉妬しています
なんとなく実家で働く小梅ですが
そこはマジメな彼女のこと
きんつばを上手く焼けるよう練習したり
デーツ(中近東で食用されるナツメヤシのドライフルーツ)
を使用した新商品にチャレンジしたりと
地道な努力をしています
物語は彼女の目線から進みます
そして妹の、つぐみ
姉より美しく姉より勉強ができる国立大学生
演劇にのめり込み積極的に人生を謳歌しています
目下の悩みはエジプト留学を母に反対されてること
実家に束縛されているように見える姉を
じれったく思っています
お姉ちゃん!もっと自由でいいんだよッ
そんなある日、妹のつぐみが『きんつば』を焼く
え!今までまったく手伝いも練習もしたことないのに
なんと素晴らしい手さばき焼きさばき!
見事な出来栄えに驚く小梅と母
しかしそれは、つぐみに憑依した
43年前に亡くなった曾祖母の榊のしわざであった
あっさりと事態を受け入れる小梅
これ幸いと昔に失われてしまった
芋あんのレシピを聞き出したりと
我が強い昭和マインドの榊とも
上手くやってっちゃいます
だが憑依するのは訳がある
榊が現代によみがえったその理由とは
仲違いし愛人の家で亡くなった
夫に宛てた手紙が心残りであったからだ
愛人から手紙を取り戻して欲しい!
曾祖母の榊の願いをかなえる小梅
けれど書かれたその内容は
小梅の想像を遥かに超える
愛憎に満ちた慟哭であった・・
さすが近藤史恵です
ただ姉妹の葛藤に終わらない
家族の歴史とルーツを絡めながら
現代の息苦しさを踏み台に変えて
成長する姉妹の姿を見事に描いています
穏やかに見えて深い所では
強く渦巻く海のように
うねる家族の姿にあなたもきっと
旅立ったあの日を思い出すでしょう
作品紹介(出版社より)
真面目な姉と自由奔放な妹。二人の姉妹に訪れる思いがけない出来事とは――
北大阪で70年続く和菓子屋「凍滝」の二人姉妹、小梅とつぐみ。姉の小梅は家業を継ぐため進学せず、毎日店に出て和菓子作りに励む働き者。 妹のつぐみは自由奔放。和菓子屋を「古臭い」と嫌い、大学で演劇にのめり込みながら、中東の国に留学したいと言って母とよく喧嘩をしている。
そんなある日、43年前に亡くなった曾祖母の魂が、何故かつぐみの身体に乗り移ってしまう。「凍滝」の創業者だった曾祖母は、戸惑う小梅に 「ある手紙をお父ちゃん(曾祖父)の浮気相手から取り戻してほしい」と頼んできた。
手紙の行方を辿る中で、少しずつ明らかになる曾祖母の謎や、「凍滝」創業時の想い。姉妹は出会った人々に影響されながら、自分の将来や、家族と向き合っていく。
「ビストロ・パ・マル」シリーズの近藤史恵が描く、少し不思議であたたかな傑作家族小説!
作品データ
タイトル:『おはようおかえり』
著者:近藤史恵
出版社:PHP研究所
発売日:2021/11/10
作家紹介
近藤史恵(こんどう・ふみえ)
1969年大阪府生れ。
1993年『凍える島』で鮎川哲也賞を受賞し、作家デビュー。
2008年『サクリファイス』で大藪春彦賞を受賞。
ほかに『ときどき旅に出るカフェ』『インフルエンス』『震える教室』『わたしの本の空白は』、「ビストロ・パ・マル」シリーズ、「清掃人探偵・キリコ」シリーズ、「猿若町捕物帳」シリーズなど、著書多数。
近藤史恵の作品紹介
『凍える島』(1993年9月)
『ねむりねずみ』(1994年7月)
『ガーデン』(1996年2月)
『スタバトマーテル』(1996年7月)
『散りしかたみに』(1998年3月)
『演じられた白い夜』(1998年10月)
『カナリヤは眠れない– 整体師・合田力』(1999年7月)
『アンハッピードッグズ』(1999年10月)
『茨姫はたたかう– 整体師・合田力(2000年6月)
『この島でいちばん高いところ』(2000年10月)
『巴之丞鹿の子– 猿若町捕物帳』(2001年10月)
『遙かなる時空の中で– 遙かなる夢ものがたり』(2001年12月)
『桜姫』(2002年1月)
『遙かなる時空の中で2』(2002年5月)
『青葉の頃は終わった』(2002年10月)
『ほおずき地獄– 猿若町捕物帳』(2002年10月)
『天使はモップを持って– 清掃人探偵・キリコ』(2003年3月)
『Shelter(シェルター)– 整体師・合田力』(2003年9月)
『狼の寓話– 南方署強行犯係』(2003年10月)
『遙かなる時空の中で2– 八葉幻夢譚』(2004年2月)
『二人道成寺』(2004年3月)
『モップの精は深夜に現れる– 清掃人探偵・キリコ』(2005年2月)
『遙かなる時空の中で– 花がたみ』(2005年3月)
『賢者はベンチで思索する』(2005年5月)
『黄泉路の犬– 南方署強行犯係』(2005年9月)
『にわか大根– 猿若町捕物帳』(2006年3月)
『ふたつめの月(短編集)』(2007年5月)
『モップの魔女は呪文を知ってる– 清掃人探偵・キリコ』(2007年6月)
『サクリファイス』(2007年8月)
『タルト・タタンの夢』(2007年10月)
『遙かなる時空の中で3– 紅の月』(2007年12月)
『ヴァン・ショーをあなたに』(2008年6月)
『寒椿ゆれる– 猿若町捕物帳』(2008年11月)
『エデン』(2010年3月)
『アネモネ探偵団– 香港式ミルクティーの謎』(2010年3月)
『薔薇を拒む』(2010年5月)
『あなたに贈るX(キス)』(2010年7月)
『砂漠の悪魔』(2010年9月)
『モップの精と二匹のアルマジロ– 清掃人探偵・キリコ』(2011年2月)
『アネモネ探偵団2– 迷宮ホテルへようこそ』(2011年3月
『三つの名を持つ犬』(2011年5月)
『サヴァイヴ』(2011年6月)
『ホテル・ピーベリー』(2011年11月)
『ダークルーム』(2012年1月)
『アネモネ探偵団3– ねらわれた実生女学院』(2012年3月)
『シフォン・リボン・シフォン』(2012年6月)
『はぶらし』(2012年9月)
『キアズマ』(2013年4月)
『土蛍– 猿若町捕物帳』(2013年6月)
『さいごの毛布』(2014年3月)
『胡蝶殺し』(2014年6月)
『私の命はあなたの命より軽い』(2014年11月)
『岩窟姫』(2015年4月)
『昨日の海と彼女の記憶』(2015年7月)
『スーツケースの半分は』(2015年10月)
『モップの精は旅に出る– 清掃人探偵・キリコ』(2016年4月)
『スティグマータ』(2016年6月)
『シャルロットの憂鬱』(2016年10月)
『マカロンはマカロン』(2016年12月)
『ときどき旅に出るカフェ』(2017年4月)
『インフルエンス』(2017年11月)
『震える教室』(2018年3月)
『わたしの本の空白は』(2018年5月)
『みかんとひよどり』(2019年2月)
『歌舞伎座の怪紳士』(2020年1月)
『夜の向こうの蛹たち』(2020年6月)
『たまごの旅人』(2021年7月)
『おはようおかえり』(2021年11月)
『シャルロットのアルバイト』(2022年2月)