ケイチャン
【2022年49冊目】
今回ご紹介する一冊は、
古市憲寿 著
『ヒノマル』です。
もくじ
【感想】「兄の恋人とは、なんて魅惑的なのか」
ロシアによるウクライナ侵略戦争が行われている今
ぜひ読みたい戦時の日常と恋を描いた物語です
プーチン大統領の支持率が80%を超える!
この報道に違和感を覚える人も多いのではないでしょうか
あれほど残酷な戦争を仕掛けてるのに何故?と
似たような歴史がありました
隣国に侵略し、傀儡政権を打ち立て支配する・・
あれれ?ロシアのクリミア併合とかぶりますね
そしてその国の民衆は、勝った勝ったと大喜び
そうかつて日本が行った日中戦争です
世界の国は怒り、戦争を止めようと経済制裁をします
ここもかつての日本と今のロシアの状況が被ります
さて、国民はどうしたでしょうか?
経済制裁を科したアメリカに怒り、自国政府を支持します
アメリカめ、なんてことしやがる!許さない!と
そして新たな戦争が始まってしまった・・
本書は日本が正しく、アメリカが悪
天皇は神で、絶対正義と教育されて
立派な軍国少年となった新城勇二が主人公です
中学生の彼は大本営発表の日本軍の戦果に狂喜乱舞し
愛国心をメラメラと燃えさせます
日本は強い、日本は最高だ!と
プロパガンダの下に生きる
国民を操作する宣伝工作
それは教育や文化、生活の至る所に張り巡らされ
民衆を絡めとる
しかもそれは、心地良いのです
見たいものだけ見て、信じたいことだけを信じる
自国の素晴らしさ、正しさ、優越さを
これでもかと宣伝されて、そこにひたりこむ
なんて気持ち良いことでしょうか
かつての日本がそうであったように
現在のプーチン大統領が支持されるもの納得です
しかし、現実と理想にはギャップがつきもの
日本は勝利しているのもかかわらず
日々の生活はだんだん苦しくなる・・あれれ?何故
そして勇二の兄も出征する
この物語で強烈に輝くキャラクター
それが勇二の兄の恋人、洞窟の魔女こと涼子です
清純な容姿なのに積極的
知的で論争好き、行動力にあふれ
無免許運転でダットサンをかっ飛ばす
複雑な性格の、1才年上の女性です
これはいけない!
こんな女性がいたら
惹かれないわけにいかない
しかし彼女は、兄の恋人なのだ
戦局が加速度的に悪化するなか
距離が縮まる勇二と涼子
非常事態は逆に2人の絆を強くするのです
今まで信じていた日本の理論がおかしいことに
気付き始める勇二
そしてもう一つ認めなければいけない
涼子に惹かれていることに・・
かつての日本と、今のロシアの状況が似ており
タイムリーに感じました
日本が自力でプロパガンダから脱することが出来ず
国土が焦土と化し、原爆を2発投下されて
ようやく敗戦できた歴史を考えると
ロシアの未来に暗澹たる思いになります
第二次世界大戦後のあおりをくらって
2国に分断された朝鮮のような悲哀を
ウクライナの人々がこれ以上受けないことを
祈ります
作品紹介(出版社より)
昭和18年、戦時下の日本。国家のために死ぬことを夢見る軍国少年・勇二が出会ったのは、歴史学者の娘・涼子。日本が戦争に負けると言い放ち、自由奔放に振る舞う不謹慎な彼女が、大学生の兄の恋人だと知ったのは、学徒出陣が近付く頃だった…。
「どうして俺が生き残っちゃったんだろうな」
「生き残ることは罪じゃないでしょう」
自由が統制され、夢を見ることさえ叶わない社会で、少年少女はどこへたどりつくのか。
秘密の図書館、真夜中の帝都、出征の朝、西へ向かう夜汽車、真っ白な日の丸。
『平成くん、さようなら』の著者による書き下ろし本格青春小説。
作品データ
タイトル:『ヒノマル』
著者:古市憲寿
出版社:文藝春秋
発売日:2022/2/22
作家紹介
古市 憲寿 (ふるいち・のりとし)
1985年東京都生まれ。 社会学者。 慶應義塾大学SFC研究所上席所員。
「経済財政動向等についての集中点検会合」委員、内閣官房「クールジャパン推進委員」メンバーなどを務める。
日本学術振興会「育志賞」受賞。
若者の生態を的確に描出した『絶望の国の幸福な若者たち』で注目され、メディアでも活躍。他の著書に『誰の味方でもありません』『平成くん、さようなら』など。
若者の生態を的確に描出し、クールに擁護した著書『絶望の国の幸福な若者たち』などで注目される。
古市 憲寿の作品紹介
『希望難民ご一行様– ピースボートと「承認の共同体」幻想』(2010年8月)
『遠足型消費の時代– なぜ妻はコストコに行きたがるのか?』(2011年3月)
『絶望の国の幸福な若者たち』(2011年9月)
『上野先生、勝手に死なれちゃ困ります– 僕らの介護不安に答えてください』(2011年10月)
『頼れない国でどう生きようか』(2012年10月)
『働き方は「自分」で決める』(2012年11月)
『誰も戦争を教えられない』(2013年8月)
『社会の抜け道』(2013年10月)
『だから日本はズレている(2014年4月)
『国家がよみがえるとき– 持たざる国であるフィンランドが何度も再生できた理由』(2015年6月)
『保育園義務教育化』(2015年7月)
『古市くん、社会学を学び直しなさい!!』(2016年10月)
『大田舎・東京– 都バスから見つけた日本』(2017年6月)
『誰の味方でもありません』(2019年4月)
『絶対に挫折しない日本史』(2020年9月)
『楽観論』(2021年8月)
『平成くん、さようなら』(2018年11月)
『百の夜は跳ねて』(2019年6月)
『奈落』(2019年12月)
『アスク・ミー・ホワイ』(2020年8月)
『ヒノマル』(2022年2月)