ケイチャン
【2024年127冊目】
今回ご紹介する一冊は、
町田そのこ 著
『わたしの知る花』です。
もくじ
【感想】「すれ違う、愛」
愛する人のために
何をすればいいの?
ジェンダーに悩み傷つく
人々を描く群像小説です
ケイチャン
オトコは台所に立つもんじゃない!
という言葉を聞いたことはありますか?
僕の父親世代はこう言われていたらしく
現に父は料理が何ひとつ出来ませんでした
トースターでパンが焼けるようになりました!
と、だいぶ前に父に自慢げに言われて
びっくりした憶えがあります
ケイチャン
え?トースターも使えなかったの!
そんな父は、ちょっと成長して
焼きそばを炒めたりラーメンを茹でたり
出来るようになりました
プーくん
お父さん、ヤればデキるじゃん!笑
こんな父の姿をずっと前に亡くなった
お祖母ちゃんが見たら・・
偉いね~、と思うのか
男が料理するなんて可哀そう、と嘆くのか
価値観の変遷にお祖母ちゃんも
きっと驚くことでしょうね
元気な女子高生の安珠(あんじゅ)の悩みは
幼なじみの奏斗(かなと)くんのこと
なよッとして料理とお花が好き
身体は男性だが、ココロは・・
オトコ?オンナ?それとも
どちらでもないのか??
性意識が違うのか?
それ以前に
性認識がなんだかわからず
悩む奏斗くん
けれどまだまだ子供の安珠ちゃんは
そんな彼の悩みを受け止められず
仲たがいしてしまうんだ
・・ああ、どうすればいいの?
そんな時に出会ったのが
幼子のような黒い瞳をもつ
不思議な雰囲気を醸す老人
いつもスケッチブックを持ち歩き
目についたものを描いている
ケイチャン
なぜか心に留まるその姿
物語は語り手を変えては
現在から過去へ遡り
故郷へ帰ってきたこの老人の
心の傷を解き明かしてゆく
それは望んだ愛は得られず
タイミングの掛け違いで
幸せを掴めなかった
不器用な人生の軌跡でした
不器用だったり
頑固だったり
不完全な登場人物たちが
上手くいかない人生に悩む
思い違いだったり
タイミングの悪さから
大切な人と離れてしまい
不運な人生に嘆く
ケイチャン
・・僕のことかよ!
まさしく等身大な登場人物たちに
自分の姿を重ね合わせてしまいます
不器用にしか生きられなかった老人
葛城平(かつらぎ へい)
すれ違い、掛け違い、
タイミングが合わずに
幸せを逃してきました
しかしその一本筋の通った
生きざまは美しく
自分の心に真摯なところは
心を打つものがありました
まるで未熟な僕を写す鏡のような
つまづきながら生きる姿に
じれったさと共感を覚えます
不完全な僕らの物語です
ケイチャン
最後はまた安珠ちゃんのもとに
ぐるりと戻ってくるストーリーは
ちょっと切なくも微笑ましい
暖かい気持ちになるエンディングでした
ケイチャン
幸せのタイミングを
逃さずに掴みたいものですね
作品紹介(出版社より)
「あんたは、俺から花をもらってくれるのか」
虫も殺せぬ優男、結婚詐欺師……?
77歳で孤独死した老人の、誰も知らない波瀾に満ちた意外な人生とは?『52ヘルツのクジラたち』町田そのこの新作は、一人の男と美しい花を巡る物語。
作品データ
タイトル:『わたしの知る花』
著者:町田そのこ
出版社:中央公論新社
発売日:2024/7/22
作家紹介
町田そのこ (まちだ・そのこ)
1980年生れ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。
2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。
他著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『星を掬う』などがある。
町田そのこの作品紹介
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(2017年8月)
『ぎょらん』(2018年10月)
『うつくしが丘の不幸の家』(2019年11月)
『52ヘルツのクジラたち』(2020年4月)
『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』(2020年7月)
『星を掬う』(2021年10月)
『コンビニ兄弟2―テンダネス門司港こがね村店―』(2021年12月)
『宙ごはん』(2022/05/27)
『ぎょらん』2023/6/26
『コンビニ兄弟3:―テンダネス門司港こがね村店』2023/8/29
『夜明けのはざま』2023/11/8
『わたしの知る花』2024/7/22