ケイチャン
【2023年68冊目】
今回ご紹介する一冊は、
齋藤彩 著
『母という呪縛 娘という牢獄』です。
もくじ
【感想】「納得して罪を受け入れる」
医学部9浪の娘が母を刺殺した事件の
ルポルタージュです
ぐるぐるに絡まった糸は
断ち切るより他なかったのか?
我が子の幸せを願う
親ならば当然のことでしょう
そこで親が選んだ選択は
娘を医者にする
でした
だが医学部受験は超難関
望んだって届かないことです
しかし、諦められない
こうして母娘の関係は
ぐるぐるとこんがらって
ほどくことが出来ない
修復不能な状態に陥るのだった
医学部9浪の末に断念する
・・これは地獄ですね
人生の最も輝く時期を
勉強に費やし
しかも叶わなかった
さらに地獄なのは
当人である娘が
受験合格を早々に諦めていたこと
私は無駄なことをしている・・
絶望的な気持ちで勉強する
日々はどんな気持ちだったのか
母が諦めるのを待ち
やっと受験地獄から
脱出するが
もはや母娘関係は閾値を超えていた
母が死ぬか
娘が死ぬか
どちらかが死ななければ
この関係から抜けられない
そして娘は母に包丁を突き刺す
初審は母の殺害を否定していて
懲役15年
2審は母の殺害を認めて
懲役10年
本書の後半は
娘が母の殺害を認めて
自分を見つめ直し
罪を受け入れる過程が
丁寧に綴られます
懲役15年から
10年になったことは
裁判所はよほど娘の事情を
斟酌したのでしょう
全てを語り認めた上で
娘は罪を受け入れる
その心境変化が
リアリティに溢れています
僕も受験生の親であり
かつて受験生だったので
2人の気持ちはよくわかります
だがこの親は良くない
子供は自分ではないのだから
いつまでも自分の気持ちを
押し付けるのはダメでしょう
子供を大切に思い
手助けするのは大切ですが
それと同じぐらい
突き放し自分で選択させ
自分の人生を生きさせることが
大切なのではと思いました
とはいえ・・
自分の子供だと
言いたいこと言っちゃって
後悔することありますよね
親子は難しいもんだ
作品紹介(出版社より)
夜3時42分。母を殺した娘は、ツイッターに、
「モンスターを倒した。これで一安心だ。」
と投稿した。18文字の投稿は、その意味するところを誰にも悟られないまま、放置されていた。
2018年3月10日、土曜日の昼下がり。
滋賀県、琵琶湖の南側の野洲川南流河川敷で、両手、両足、頭部のない、体幹部だけの人の遺体が発見された。遺体は激しく腐敗して悪臭を放っており、多数のトンビが群がっているところを、通りかかった住民が目に止めたのである。
滋賀県警守山署が身元の特定にあたったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。
周辺の聞き込みを進めるうち、最近になってその姿が見えなくなっている女性がいることが判明し、家族とのDNA鑑定から、ようやく身元が判明した――。
髙崎妙子、58歳(仮名)。
遺体が発見された河川敷から徒歩数分の一軒家に暮らす女性だった。夫とは20年以上前に別居し、長年にわたって31歳の娘・あかり(仮名)と二人暮らしだった。
さらに異様なことも判明した。
娘のあかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っていたが、母・妙子に超難関の国立大医学部への進学を強要され、なんと9年にわたって浪人生活を送っていたのだ。
結局あかりは医学部には合格せず、看護学科に進学し、4月から看護師となっていた。母・妙子の姿は1月ころから近隣のスーパーやクリーニング店でも目撃されなくなり、あかりは「母は別のところにいます」などと不審な供述をしていた。
6月5日、守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕する。その後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。
一審の大津地裁ではあくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。母と娘――20代中盤まで、風呂にも一緒に入るほど濃密な関係だった二人の間に、何があったのか。
公判を取材しつづけた記者が、拘置所のあかりと面会を重ね、刑務所移送後も膨大な量の往復書簡を交わすことによって紡ぎだす真実の物語。
獄中であかりは、多くの「母」や同囚との対話を重ね、接見した父のひと言に心を奪われた。そのことが、あかりに多くの気づきをもたらした。
一審で無表情のまま尋問を受けたあかりは、二審の被告人尋問で、こらえきれず大粒の涙をこぼした――。
殺人事件の背景にある母娘の相克に迫った第一級のノンフィクション。
作品データ
タイトル:『母という呪縛 娘という牢獄』
著者:齋藤彩
出版社:講談社
発売日:2022/12/16
作家紹介
齋藤彩(さいとう・あや)
1995年東京生まれ。
2018年3月北海道大学理学部地球惑星科学科卒業後、共同通信社入社。
新潟支局を経て、大阪支社編集局社会部で司法担当記者。 2021年末退職。