ケイチャン
【2024年137冊目】
今回ご紹介する一冊は、
井上荒野 著
『猛獣ども』です。
もくじ
【感想】「理性が及ばない、野獣性」
不倫密会の男女が
熊に殺された別荘地で
男女の悲喜こもごもを描く
不穏な群像劇です
舞台は八ヶ岳山麓にある
避暑用の分譲別荘地です
管理人が常駐しているが
セレブ御用達ってほどではありません
住民はフツーの方がほとんどです
ふもとの町からわざわざ
別荘地へ来て、不倫密会を
していた男女が、熊さんに
襲われて殺されてしまったんだ
衝撃の波は別荘の住民たちの
心をざわめかせ気持ちを泡立て
湖の底に沈殿した泥が湧き上がるように
落ち着かない様子となるのだ
社内不倫の不祥事で
東京から飛ばされたきた
新管理人の七帆(ななほ)さん
クールな印象ですが
その性格は行き当たりばったり
同じく不倫の不始末で
東京から逃げ出してきた
同僚の管理人の慎一(しんいち)さんと
男女が出会えば何かがはじまる的に
お付き合い寸前の関係になります
ケイチャン
ガックンガックンと揺れる
やじろべえのような関係性に
ヤキモキしてしまう
ケイチャン
まだ付き合わないのかよ!笑
物語は別荘地に住む
Iターンの新婚夫婦
売れない作家と人気作家の夫婦
愛情の熱量が異なるペンション経営の夫婦
などなど
事情も年齢も様々な男女の
心のざわめきを描いてゆく
その心情は、もう混沌です
登場人物たちの
予想のつかない心の動きはまるで
跳ねまわる子犬の散歩のようです
その勢いに
引っ張られて、読み進めるが
いつの間にかやんちゃな子犬が
獰猛な熊ちゃんに変わっているんだ
ケイチャン
手なずけることの出来ない
心の猛獣に
右往左往する登場人物の姿が
自分自身に重なります
ケイチャン
しかし
失敗ばかりしている
登場人物のようすに
このままで、いいじゃん!
なーんて気持ちになりました
ケイチャン
まとまりのつかないまま
終わる物語ですが
なんだか達観した感覚があり
おさまりが良かったです
ケイチャン
ざわめく猛獣の棲む森の中で
僕らは落ち着く間もなく
さまよう他ないのでしょうね
作品紹介(出版社より)
「姦通」していた男女が熊に殺された—。
閑静な別荘地で起きた事件は、愛に傷ついた管理人の男女と、6組の夫婦に何をもたらしたのか。
愛の行方の複雑さを描く傑作長編!運命の人からきらわれたり捨てられたりすることもある。
作品データ
タイトル:『猛獣ども』
著者:井上荒野
出版社:春陽堂書店
発売日:2024/8/7
作家紹介
井上荒野(いのうえ・あれの)
1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。
1989年『 わたしのヌレエフ 』で第1回フェミナ賞を受賞。
2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞を受賞。
2008年『切羽へ』で第139回直木賞を受賞。
2011年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞を受賞。
2016年『赤へ』で第29回柴田錬三郎賞を受賞。
2018年『その話は今日はやめておきましょう』で第35回織田作之助賞を受賞。
その他、『あちらにいる鬼』『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』『小説家の一日』『照子と瑠衣』など著書多数。
井上荒野 の作品
『グラジオラスの耳』 1991/05/01
『もう切るわ』 2001/10/01
『ひどい感じ―父・井上光晴』 2002/08/01
『ヌルイコイ』 2002/10/01
『潤一』 2003/11/01
『森のなかのママ』 2004/03/26
『だりや荘』 2004/07/22
『しかたのない水』 2005/01/26
『誰よりも美しい妻』 2005/12/15
『不恰好な朝の馬』 2006/10/31
『学園のパーシモン』 2007/01/01
『ズームーデイズ』 2007/07/01
『ベーコン』 2007/10/26
『夜を着る』 2008/02/18
『切羽へ』 2008/05/01
『あなたの獣』 2008/11/29
『雉猫心中』 2009/01/22
『静子の日常』 2009/07/01
『女ともだち』 2010/03/18
『つやのよる』 2010/04/01
『もう二度と食べたくないあまいもの』 2010/04/10
『チーズと塩と豆と』 2010/10/05
『ベッドの下のNADA』 2010/12/09
『ハニーズと八つの秘めごと』 2011/02/25
『そこへ行くな』 2011/06/24
『キャベツ炒めに捧ぐ』 2011/09/01
『だれかの木琴』 2011/12/09
『結婚』 2012/03/27
『夜をぶっとばせ』 2012/05/18
『さようなら、猫』 2012/09/15
『それを愛とまちがえるから』 2013/01/24
『あなたにだけわかること』 2013/05/24
『ほろびぬ姫』2013/10/31
『夢のなかの魚屋の地図』 2013/12/21
『虫娘』 2014/08/27
『悪い恋人』 2014/12/05
『ママがやった』 2016/01/16
『赤へ』 2016/06/14
『綴られる愛人』 2016/10/05
『あなたならどうする』 2017/06/16
『その話は今日はやめておきましょう』 2018/05/18
『あちらにいる鬼』 2019/02/07
『あたしたち、海へ』 2019/11/27
『そこにはいない男たちについて』 2020/07/15
『ママナラナイ』 2020/10/14
『百合中毒』 2021/04/26
『生皮 あるセクシャルハラスメントの光景』 2022/04/07
『小説家の一日』 2022/10/13
『荒野の胃袋』 2022/10/20
『僕の女を探しているんだ』 2023/02/20
『錠剤F』2024/1/10
『猛獣ども』2024/8/7