ケイチャン
【2023年57冊目】
今回ご紹介する一冊は、
桐野夏生著
『真珠とダイヤモンド 下』です。
もくじ
【感想】「踊っているのか、踊らされていたのか・・」
時代の波に乗り
若くして大金を掴んだ
若者たちを描く
バブル小説です
福岡で成功を収めた望月
下巻では舞台を東京に移して
いよいよ燃え上がる
バブルの真っ只中で
頂点から奈落へと
昇り降りするジェットコースター
のようなストーリーが展開します
身の丈に合わない生活
さて前半は大金を
扱うようになった
望月夫妻のたががはずれて
ゆく過程が描かれます
銀座で飲み食い散財し
真っ赤なポルシェを飛ばし
ホストクラブで豪遊する
・・なんでこうなっちゃう?
慎ましい生活をしていた
過去に復讐するかのように
お金を使いまくる2人
若さゆえ仕方がないのか?
だが破滅の幕は
すでに上がっていたのでした
後半は打って変わって
バブルがはじけて
追い詰められてゆく
望月夫妻の破滅が描かれる
大人たちに踊らされていた・・
そう語るのは
若きトレーダーたちです
そしてとれもしない
多大な責任を取らされるのだ
欲望に忠実に踊った
望月と佳那と
欲望がない水矢子とが
対照的です
でも幸福だったのは
どちらなのか?
細いロウソクが消えゆくような
水矢子の人生よりも
一度でも胸躍る狂騒に暮れた
望月と佳那は
それで本望だったのではないか?
とも思ってしまいます
そして望月と佳那には
最後まで醜く足掻いて
自分で責任を取らない
卑怯な大人に一矢報いて
欲しかったなあと
悔しく思いました
いつかまた
高らかにバブルの笛が
吹き鳴らされた時
あなたは踊りますか?
作品紹介(出版社より)
桐野夏生が描く「バブル」
欲、たぎる地で向かえる圧巻のクライマックス時代はバブル全盛に。東京本社に栄転が決まった望月と結婚した佳那(かな)は、ヤクザの山鼻の愛人・美蘭(みらん)のてほどきで瞬く間に贅沢な暮らしに染まっていく。一方の水矢子(みやこ)は不首尾に終わった受験の余波で、思いがけない流転の生活がスタートする。そして、バブルに陰りが見え始めた頃、若者たちの運命が狂い出す……。
作品データ
タイトル:『真珠とダイヤモンド 下』
著者:桐野夏生
出版社:毎日新聞出版
発売日:2023/2/2
作家紹介
桐野夏生(きりの・なつお)
1951年金沢市生まれ。
1993年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。
1998年『OUT』で日本推理作家協会賞受賞。
1999年『柔らかな頬』で直木賞受賞。
2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞受賞。
2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞受賞。
2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞受賞。
2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞受賞。
2009年『女神記』で紫式部文学賞受賞。
2010年、2011年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。
2015年には紫綬褒章を受章。
2021年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。
『バラカ』『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。
桐野夏生の作品
『 熱い水のような砂 』 (1986年2月)
『 真昼のレイン 』 (1986年7月)
『 顔に降りかかる雨– ミロシリーズ1 』 (1993年9月)
『 天使に見捨てられた夜– ミロシリーズ2 』(1994年6月)
『 ファイアボール・ブルース 』(1995年1月)
『 OUT 』(1997年7月)
『 錆びる心 』(短編集)(1997年11月)
『 水の眠り 灰の夢– ミロシリーズ3 』(1998年10月)
『 ジオラマ 』(短編集)(1998年11月)
『 柔らかな頬 』(1999年4月)
『 ローズガーデン– ミロシリーズ4 』(短編集)(2000年6月)
『 光源 』 (2000年9月)
『 玉蘭 』 (2001年3月)
『 ファイアボール・ブルース2 』(短編集)(2001年8月)
『 ダーク– ミロシリーズ5 』(2002年10月)
『 リアルワールド 』(2003年2月)
『 グロテスク 』(2003年6月)
『 残虐記 』(2004年2月)
『 I’m sorry, mama. 』(2004年11月)
『 魂萌え! 』(2005年4月)
『 冒険の国 』(2005年10月)
『 アンボス・ムンドス– ふたつの世界 』(短編集)(2005年10月)
『 メタボラ 』(2007年5月)
『 はじめての文学 』(2007年8月)
『 東京島 』(2008年5月)
『 女神記 』(2008年11月)
『 IN 』(2009年5月)
『 ナニカアル 』(2010年2月)
『 優しいおとな 』(2010年9月)
『 ポリティコン 』(2011年2月)
『 緑の毒 』(2011年8月)
『 ハピネス 』(2013年2月)
『 だから荒野 』(2013年10月)
『 夜また夜の深い夜 』(2014年10月)
『 奴隷小説 』(短編集)(2015年1月)
『 抱く女 』(2015年6月)
『 バラカ 』(2016年2月)
『 猿の見る夢 』(2016年8月)
『 夜の谷を行く 』(2017年3月)
『 デンジャラス 』(2017年6月)
『 路上のX 』(2018年2月)
『 ロンリネス 』(2018年6月)
『 とめどなく囁く 』(2019年3月)
『 日没 』(2020年9月)
『 インドラネット 』(2021年5月)
『 砂に埋もれる犬 』(2021年10月)
『燕は戻ってこない』(2022年3月)
『真珠とダイヤモンド上』(2023年2月)
『真珠とダイヤモンド下』(2023年2月)