ケイチャン
【2023年41冊目】
今回ご紹介する一冊は、
長沢樹 著
『クラックアウト』です。
もくじ
【感想】「蟲毒の虫どもよ!生き残るのは誰だ?」
代償はあまりに高くついてしまった
薬物取引のスクープを手にした記者が
犯罪組織の恨みを買い
落とし前をつけさせられることになる
それが・・殺し屋になることだった!
元アイドルで人気女優の
薬物使用疑惑からスタートするが
これは序の口
この女優は池袋を舞台とする
犯罪組織の抗争開始の合図を告げる
生贄だったのだ
物語は中国系マフィアと
ヤクザの抗争
そして警察内部の権力闘争をも
巻き込む3つどもえの
大乱闘に発展するのだ
さて主人公の三砂瑛太(みさご えいた)は
イケイケの記者時代に大スプークを手にします
しかし相手が悪かった
大損害を被った中国系マフィアに拉致され
殺されそうになります
それを救ったのが
父の友人であり
先の殺し屋『送死人』の辻先です
コイツは見込みがあるから
殺すのは止めようぜ、と
その見込みとは
ロッククライミングと
パルクールの技です
身体能力の高さを買われて
辻先により一人前の殺し屋として
技能を叩き込まれる
かくして2代目の送死人が誕生するのだ
強いが無敵ではない
弱みもある三砂のキャラクターが良い
常に絶体絶命、死と隣り合わせの状況を
鍛えぬいた体と、記者時代に培った知恵で
紙一重でくり抜けるスリリングな展開に
手に汗握ります
サブキャラクターも曲者ぞろいで
特に殉職した父の仇を討つべく奔走する
女刑事、鴻上綾ちゃんのブチキレ具合には
ゾクゾクしちゃいます
物語は犯罪組織の跡目争いを軸に
展開しますが、じょじょにこの内紛には
裏で絵図を引いている存在が
浮かび上がってきます
本当の敵は誰だ?
裏切者はどいつだ?
そしてこの混乱の後に
生き残ることが出来るのか?
全編ハードアクション
正義など糞くらえと裏切りが横行し
カラスが泣き叫ぶ黄昏時のような
不吉なざわめきにワクワクする物語でした
作品紹介(出版社より)
令和ぶっちぎりのノワール降臨。中国系マフィア、ヤクザ、警察。池袋、ワルたちの狂宴――。強固な組織力と圧倒的暴力を持ち、池袋に本拠を置く中国系反社組織「玄武(シェンウー)」。この組織を率いてきた孟会長の死期が迫っていた。表面化し始める跡目争い。この機を虎視眈々と狙う対立ヤクザ久和組、そして反社撲滅を目指す警視庁。危ういバランスを保っていた街は、玄武が飼う暗殺者・送死人が一人の女優を殺したことにより、破滅に向かって派手に弾け始める――。
作品データ
タイトル:『クラックアウト』
著者:長沢樹
出版社:角川春樹事務所
発売日:2023/1/13
作家紹介
長沢 樹(ながさわ・いつき)
1969年新潟県生まれ。
2011年『消失グラデーション』で第31回横溝正史ミステリ大賞を受賞しデビュー。同作は各種ミステリランキングにランクインするなど、高い評価を受ける。
2013年『夏服パースペクティヴ』で第13回本格ミステリ大賞候補。
2017年に上梓した『ダークナンバー』は各紙誌で多くの書評家から絶賛される
長沢樹 の作品
『消失グラデーション』 (2011/09/27)
『夏服パースペクティヴ(樋口真由“消失”シリーズ)』 (2012/11/01)
『上石神井さよならレボリューション』 (2013/09/05)
『幻痛は鏡の中を交錯する希望』 (2016/02/24)
『冬空トランス』 (2016/10/25)
『ダークナンバー(2017/03/23)
『龍探 特命探偵事務所ドラゴン・リサーチ』 (2020/03/24)
『イン・ザ・ダスト』 (2021/01/26)
『クラックアウト 』 (2023/01/13)