ケイチャン
【2022年174冊目】
今回ご紹介する一冊は、
日比野コレコ 著
『ビューティフルからビューティフルへ』です。
もくじ
【感想】「肯定感がなくたって、生きて行けるのね!」
自己否定も突き抜けたら
存在意義に転換するのか?
偏差値の高い学校に通うJK3のナナの
不穏当な独白から始まるストーリーは
真っ黒な不安と絶望に塗りこめられて
明るい語り口との落差がすごい
続く第2の主人公の静から
底辺高校での刹那的な学校生活が描かれるが
それよりも静の日常的に薬物をキメてるような
ぶっ飛んだ言葉が恐ろしい
絶対に近づいてはいけないタイプの
2人の女子高生が主人公です
学力も性格も真逆と言うよりは
次元が違うナナと静
イルカとチンパンジーくらいの
分かり合えない差があります
そんな2人を繋ぐのは
見た目はフツー、中身は得体の知れない
おばあちゃん、ことばぁの日本語教室でした
いったい2人は何を求めて
この謎のおばあちゃんの下に通っているのか?
ナナは母親関係と大学受験のストレスに
静は高低差ありすぎる感情を持て余す
まるで坂道を転げ落ちる
ラグビーボールを追いかけるような
心持ちです
しかし思春期の感情は
程度の差はあれど
ゆれ動くものでしょう
逆に安定した心の高校生のほうが
怖いよ
何も解決せずに
吐き出すような独白で
終わるエンディングは
まるでオチのない女子の会話のよう
日常の風景です
本書の魅力は
ラップのリリック(歌詞)のような
激しく急き立てられるような
リズム感ある文章だと思います
今の時代を映す言葉が選ばれ
まるで韻を踏むように綴られ
ハマるとグッと世界に没入し
僕の心も高揚しました
絶望と吊りあう希望などない
絶望を自分の一部と受け入れる
死の舞踏のような
残酷で滑稽な物語
とても気に入りました
作品紹介(出版社より)
絶望をドレスコードに生きる高3の静とナナは、「ことばぁ」という老婆の家に毎週通っていて――。たたみかけるパンチラインで語られる高校生たちのモノローグ。第59回文藝賞受賞作。
18歳の新星が放つ、一段飛ばしの言語感覚!
絶望をドレスコードに生きる高3の静とナナ。生と死の両極に振り切れ乱反射する、高校生たちのモノローグ。
第59回文藝賞受賞作。
作品データ
タイトル:『ビューティフルからビューティフルへ』
著者:日比野コレコ
出版社:河出書房新社
発売日:2022/11/16
作家紹介
日比野コレコ (ひびの・これこ)
2003年奈良県生まれ。
2022年に本作で第59回文藝賞を受賞し、デビュー。
日比野コレコの作品紹介
『ビューティフルからビューティフルへ』(2022/11/16)