【本の感想】『地上の楽園』月村了衛|人生が狂ったのは、誰のせい?
【感想】「人生が狂ったのは、誰のせい?」
希望を抱いて帰国したら
・・そこは地獄だった
北朝鮮帰還(帰国)事業の
真実と責任を問う物語です
失政の責任は誰も取らなくていいの?
時代と場所は昭和30年代の大阪
在日朝鮮人の少年少女が激しく
差別を受けるシーンから物語は
スタートします
こんな国から出ていきたい!
そんな中、朝鮮総連による
北朝鮮への帰国運動の機運が高まる
一部の日本政治家の後押しもあり
『地上の楽園』との報道もあって
多くの人々が北朝鮮に向かったのだが
そこで待っていたのは思いもかけない
過酷な運命でした
第一部の主人公は公立高校の生徒
孔仁学(こう じんがく)くん
書籍で北朝鮮の発展と理想にふれ
恩師の勧めもあって朝鮮総連の
帰国事業のめり込んで行く
一方で幼なじみの初子ちゃんや
仁学の父親は冷ややかな様子で
帰国事業と距離をとってゆく
・・仁学、この事業ってホントに
大丈夫なの?・・
第二部の主人公は仁学の友人
玄勇太(げん ゆうた)くん
仁学の勧めで北朝鮮に帰国し
その後の生活が描かれます
・・仁学、ここはこの世の
地獄やで・・
差別され迫害を受けていた
日本の生活が天国に思える
過酷な日々
次々と命を落とす帰国者たち
の姿に戦慄を覚えます
そして終章で描かれる
2人の姿
懺悔と後悔の日々の果てに
迎える人生の総決算に
何を思うのでしょうか?
失われた人生の責任は
誰に問えばいいの?
帰国を促し決断した
自分だけの責任なのか?
偽りの楽園を謳った、北朝鮮
真実を隠した、朝鮮総連
棄民政策した、日本の政治家
虚偽の報道をした、マスコミ

彼らは責任を取らなくてもいいのでしょうか?
厳しく断罪すべきでしょう
理想と挫折を描く
青春小説でもある本作
過酷な人生をそれでも
必死で生きた輝きが、尊いです

あなたは『地上の楽園』が本当にあると思いますか?
作品紹介(出版社より)
一九五九年に始まった北朝鮮帰還事業は、人類史上最悪の「大量殺戮」への序章だった――。二人の若者が経験した「地獄」を描き、現代に通ずる差別の源流と政治家らが犯した大罪に迫る。
作品データ
タイトル:『地上の楽園』
著者:月村了衛
出版社:中央公論新社
発売日:2025/10/21
作家紹介
月村 了衛(つきむら りょうえ)
1963年大阪府生れ。早稲田大学第一文学部卒。
2010年『機龍警察』で小説家としてデビュー。冒険小説の新たな旗手として高く評価される。
2012年『機龍警察 自爆条項』で日本SF大賞を受賞。
2013年『機龍警察 暗黒市場』で吉川英治文学新人賞を受賞。
2015年『コルトM1851残月』で大藪春彦賞を、『土漠の花』で日本推理作家協会賞を受賞。
2019年『欺す衆生』で山田風太郎賞を受賞している。
他の著書に『東京輪舞(ロンド)』『奈落で踊れ』『白日』『機龍警察 白骨街道』『ビタートラップ』などがある。
月村了衛の作品紹介
『機龍警察』(2010年3月)
『機忍兵零牙』(2010年9月)
『機龍警察 自爆条項』(2011年9月)
『機龍警察 暗黒市場』(2012年9月)
『神子上典膳 一刀流無想剣 斬』(2012年10月)
『黒警』(2013年9月)
『コルトM1851残月』(2013年11月)
『機龍警察 未亡旅団』(2014年1月)
『土漠の花』(2014年9月)
『機龍警察 火宅』(2014年12月)
『槐(エンジュ)』(2015年3月)
『影の中の影』(2015年9月)
『ガンルージュ』(2016年2月)
『水戸黄門 天下の副編集長』(2016年7月)
『黒涙』(2016年10月)
『追想の探偵』(2017年4月)
『機龍警察 狼眼殺手』(2017年9月)
『コルトM1847羽衣』(2018年1月)
『東京輪舞』(2018年10月)
『悪の五輪』(2019年5月)
『欺す衆生』(2019年8月)
『暗鬼夜行』(2020年4月)
『奈落で踊れ』(2020年6月)
『白日』(2020年11月)
『非弁護人』(2021年4月)
『機龍警察 白骨街道』(2021年8月)
『ビタートラップ』(2021年10月)
『脱北航路』(2022年4月)
『地上の楽園』2025/10/21


