現代

【本の感想】『ブレイクショットの軌跡』逢坂冬馬|自分の運命なんて、誰も掴んでいない

逢坂冬馬『ブレイクショットの軌跡||ケイチャンブックス
ケイチャン(サカキ ケイ)

【2025年125冊目】

今回ご紹介する一冊は、

逢坂冬馬 著

『ブレイクショットの軌跡』です。

【感想】 「自分の運命なんて、誰も掴んでいない」

群像現代小説

この世界で誠実であることは、もう
愚かなことなのか?
ビリヤードの玉のように転がりぶつかる
今を生きる人々の物語です

夢を持つのは祝福ではなく、呪いなのか?

たくさんの登場人物たちが
入れ替わり主人公を務める形式です
まず登場するのは自動車工場で期間工を
勤める本田昴(ほんだ すばる)くん

自動車メーカーの名前が2つも入る
まさに自動車を作る人ですね笑

2年11ヶ月の契約期間満了日に彼が
目撃するのは、同僚が組み立て中の車に
1つのちいさなボルトを落とすところ
・・これは作業停止案件だが・・

もう工場を辞める僕にとっては
関係ないことだろ?

見逃す方が、得をする案件
しかしこの1つのちいさな
ボルトをどう扱うかで、僕の
人生が変わるのかも知れない

「自分の運命なんて、誰も掴んでいない」

さてダブルミーニングなっているのが
タイトルの『ブレイクショット』です

まずは車名のブレイクショット
昴くんが組み立てていた車ですね
トヨタのランドクルーザーのような
タフで人気の車のようです

そしてもう1つがビリヤードの
ゲーム開始時に打つ
最初のショットです
本作では運命を操ることが
出来るかという問いとなっています

期間工である、昴くん
アフリカの少年兵
サッカー選手を夢見る2人
そして彼らの周りの人々
その隣に運命を突き動かす車
ブレイクショットが在るのでした

・・注意!!
以下、本作の結末の重要なネタバレがあります

なんとハッピーエンドでした

いやはや、物語の終盤まで苦しい展開が続くその先に
こんな晴れやかな終わりがあるとは・・

嬉しい驚きでした

善良であること、そして自分に正直であることは
けっして愚かな事ではない…そんなメッセージを受けました

複雑に絡まり合う現代社会では様々な価値観があって
本当に大切なモノを見失ってしまいそうですね

あなたの大切なモノはなんですか?

作品紹介(出版社より)

8つの物語の「軌跡」を奇跡の構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作

底が抜けた社会の地獄で、あなたの夢は何ですか?
自動車期間工の本田昴は、Twitterの140字だけが社会とのつながりだった2年11カ月の寮生活を終えようとしていた。最終日、同僚がSUVブレイクショットのボルトをひとつ車体の内部に落とすのを目撃する。見過ごせば明日からは自由の身だが、さて……。以降、マネーゲームの狂騒、偽装修理に戸惑う板金工、悪徳不動産会社の陥穽、そしてSNSの混沌と「アフリカのホワイトハウス」――移り変わっていくブレイクショットの所有者を通して、現代日本社会の諸相と複雑なドラマが展開されていく。人間の多様性と不可解さをテーマに、9つの物語の「軌跡」を奇跡のような構成力で描き切った、『同志少女よ、敵を撃て』を超える最高傑作。

作品データ

タイトル:『ブレイクショットの軌跡』
著者:逢坂冬馬
出版社:早川書房
発売日:2025/3/12

作家紹介

逢坂冬馬 (あいさか・とうま)

1985年生まれ。埼玉県在住。
明治学院大学国際学部国際学科卒。
2021年本書『同志少女よ、敵を撃て』 で第11回アガサ・クリスティー賞を受賞してデビュー。

逢坂冬馬の作品紹介

同志少女よ、敵を撃て』 2021/11/17
歌われなかった海賊へ』2023/10/18
ブレイクショットの軌跡』2025/3/12

Xからの読者コメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
ABOUT ME
ケイチャン
ケイチャン
サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。食べることが大好きな僕が撮影している「本のある日常風景」と共に、本の紹介と感想のブログをお楽しみください!オススメの本は?この本気になるけど面白い?…など、読む本に迷った方への参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」【ケイチャンブックス】よろしくお願いします!一緒に読書を楽しみましょう!!
Recommend
こちらの本もオススメです
記事URLをコピーしました