ケイチャン
【2024年106冊目】
今回ご紹介する一冊は、
阿部暁子 著
『カフネ』です。
もくじ
【感想】「共に行こう、夕日の彼方に・・」
最愛の弟が死んでしまった！
自暴自棄となる姉を救うのは
弟の元カノだった・・
癒しと再生を描く物語です
昨日まで元気だった弟が
突然死してしまった
しかも遺言書を残して・・
これはいったいどういうことだ？
突然死なのに遺言書があるこの不可解さ
もしや自殺ではないのか・・
不穏な疑問に焦燥するのが
姉の薫子（かおるこ）さんです
ケイチャン
・・でも悩んでいる様子なんて
気が付かなかったよ？
そして遺言書には元カノへの
財産分与が書かれていたのです
ケイチャン
・・別れたカノジョにお金を
残すなんてなんでだろう？
いくつもの疑問を抱えたまま
薫子さんは元カノのせつなさんに
連絡をとるのだが『遺産はいりません』
と断られてしまうんだ
直情的に怒る薫子さんだが
せつなさんは自分を曲げない
私にはもらう理由がない、と
頑なに拒むのでした
せつなさんのことを知るため
弟の死の真相を探るために
薫子さんは２人が共にしていた
家事代行サービスのボランティアを
せつなさんと一緒にする
そこで薫子さんは自分が
弟やせつなさんの一面しか
見ていなかったことに気が付く
弟の笑顔に隠された本当の顔は
どんな表情だったのか？
薫子さんとせつなさんの
シスターフッドが主軸となり話は進む
当初はまるでソリの合わない２人かと
思いきや実は根っこが同じようで
育った環境が違うことが分かってくる
40代バツイチの薫子さん
不妊治療のすれ違いから
夫に出て行かれた彼女は
日々、赤ちゃんをさらう妄想をする
・・子どもさえいれば、全てうまく
行っていただろうに・・
得られなかった幸せに
嘆き悲しむ様子が辛い
そんな薫子さんと対照的に
せつなさんはまだ20代なのに
子どもはいりません、と言い切る
料理が上手で実は情に厚いのに
いったいどうしてなのかと
疑問を抱きます
ボランティア活動で家事代行をする２人
テキパキと片づけ掃除をする薫子さんと
ちゃっちゃと料理をするせつなさんの
息の合った様子が微笑ましい
クールな表情のせつなさんに
始めは突っかかる薫子さんだが
次第に情に厚く面倒見よいところに
気が付き、心を通わせてゆく
それぞれの家庭環境に合わせて
作ってゆく料理たちがせつなさんの
こぼれんばかりの愛情を表している
心まで暖かく満腹になりそうです
次第に明かされてゆく
せつなさんの過酷な過去に
２人の関係を１歩踏み出そう
とする薫子さんの決意が眩しい
あまりの美しさにひるんでしまった
子どもの頃の私ではもうない
大切な人と手を取り合って
未来に進みたくなる感動的な
エンディングでした
思わずその髪に触れたくなる・・
ケイチャン
そんな大切な人が
あなたにもいますか？
作品紹介（出版社より）
一緒に生きよう。あなたがいると、きっとおいしい。
やさしくも、せつない。この物語は、心にそっと寄り添ってくれる。法務局に勤める野宮薫子は、溺愛していた弟が急死して悲嘆にくれていた。弟が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会い、やがて彼女が勤める家事代行サービス会社「カフネ」の活動を手伝うことに。弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。食べることを通じて、二人の距離は次第に縮まっていく。
作品データ
タイトル：『カフネ』
著者：阿部暁子
出版社：講談社
発売日：2024/5/22
作家紹介
阿部暁子（あべ・あきこ）
岩手県出身。『陸の魚』で雑誌Cobalt短編小説新人賞に入選。
『いつまでも』で2008年度ロマン大賞受賞。
『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ（全５冊）、『どこよりも遠い場所にいる君へ』『屋上ボーイズ』、ノベライズ『ストロボ・エッジ』『アオハライド』シリーズがある。
阿部暁子の作品紹介
『金環日蝕』2022/10/31
『カラフル ハードカバー』2024/2/26
『カフネ』2024/5/22