ケイチャン
【2024年64冊目】
今回ご紹介する一冊は、
中島京子 著
『うらはぐさ風土記』です。
もくじ
【感想】「ひょっこりと根付くという、ご縁」
東京と言うよりは武蔵野の
うらはぐさ地区
古き良き地縁が残る町を
優しく描く物語です
アメリカから帰って来た主人公
大学教員の沙希(さき)さん
20年務めた大学を解雇され
長年連れ添ったパートナーと
離婚して日本に帰国する
母校の女子大に雇われることになり
懐かしき『うらはぐさ』の地にある
伯父の古い一戸建て住宅(庭付き)で
30年ぶりの東京生活がスタートします
そこはまだ昭和の地縁が残る場所
勝手な庭師こと、秋葉原さんを始め
女子大の生徒、マーシーや
同僚の教員、来栖先生などと交流し
充実した庭付き一戸建て生活が続くのだ
冒頭で語られる、しのびよるキュウリの話が
ちょっと沙希さんの人生と重なります
実はメロンだった、しのびよるキュウリ(笑)
調べたこととぜんぜん違い
世界は意外性に満ちている
どこからやって来たのか解らないが
しっかり根付いて実を成らせるメロン
その実はまったく甘くないけれど
ピクルス液に付け込めば美味しくなる
アメリカから戻ってきて
うらはぐさに馴染み
愛着を持って暮らしてゆく
ケイチャン
沙希さんの姿と重なりますね
戦争のトラウマを持つ
秋葉原さんのお父さんの話は
平和な現代にも隠れた歴史が
流れている気付きになりました
ケイチャン
戦争という負の歴史を
熱心に学ぶマーシーの姿に
現代の若者は問題意識が
高いんだなと感じました
変わりゆく古き良き町を
そこに暮らす人々の素の表情で
優しくコミカルに描く本作
日常って素晴らしいですね
僕も自分が住んでいる街の歴史を
学んでみようかなって思いました
ケイチャン
あなたは自分の住む街を
どれぐらい知っていますか?
作品紹介(出版社より)
30年ぶりにアメリカから帰国し、武蔵野の一角・うらはぐさ地区の伯父の家にひとり住むことになった大学教員の沙希。
そこで出会ったのは、伯父の友人で庭仕事に詳しい秋葉原さんをはじめとする、一風変わった多様な人々だった。
コロナ下で紡がれる人と人とのゆるやかなつながり、町なかの四季やおいしいごはんを瑞々しく描く物語。
作品データ
タイトル:『うらはぐさ風土記』
著者:中島京子
出版社:集英社
発売日:2024/3/5
作家紹介
中島京子(なかじま・きょうこ)
1964 年東京都生まれ。出版社勤務を経て渡米。帰国後の2003 年『FUTON』でデビュー。
2010 年『小さいおうち』で第143 回直木賞を受賞。
2014 年『妻が椎茸だったころ』で第42 回泉鏡花文学賞を受賞。
2015 年『かたづの!』で第3回河合隼雄物語賞、第4回歴史時代作家クラブ賞作品賞、第28 回柴田錬三郎賞を受賞。同年『長いお別れ』で第10回中央公論文芸賞。さらに翌2016 年、同作品で第5回日本医療小説大賞を受賞。
2020 年『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。
2022 年『ムーンライト・イン』、『やさしい猫』で第72 回芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。同年『やさしい猫』で第56 回吉川英治文学賞を受賞。
その他、著作多数。
中島京子の作品紹介
『だいじなことはみんなアメリカの小学校に教わった。―脱OLの見習い先生日記』 1999/03/01
『ライターの仕事 (自分に合う仕事BOOKS) 』1999/09/01
『自然と環境にかかわる仕事 (自分に合う仕事BOOKS)』 2000/06/01
『FUTON』2003/06/01
『イトウの恋』2005/03/05
『さようなら、コタツ』2005/05/19
『ツアー1989』2006/05/26
『均ちゃんの失踪』2006/11/10
『桐畑家の縁談』2007/03/22
『旅を数えて』 2007/08/01
『冠・婚・葬・祭』 2007/09/01
『平成大家族 』2008/02/05
『ハブテトル ハブテトラン 』2008/12/01
『エ/ン/ジ/ン』 2009/02/28
『小さいおうち』 2010/05/27
『エルニーニョ』 (100周年書き下ろし) 2010/12/10
『花桃実桃』2011/02/01
『東京観光』2011/08/05
『眺望絶佳』2012/02/01
『のろのろ歩け』2012/09/27
『パスティス: 大人のアリスと三月兎のお茶会』2014/11/10
『長いお別れ 』2015/05/27
『彼女に関する十二章 』2016/04/06
『ゴースト』 2017/08/07
『樽とタタン』 2018/02/22
『夢見る帝国図書館 』2019/05/15
『キッドの運命 』2019/12/05
『ムーンライト・イン』 2021/03/02
『やさしい猫』2021/08/18
『オリーブの実るころ』2022/06/22
『うらはぐさ風土記』2024/3/5