ケイチャン
【2022年36冊目】
今回ご紹介する一冊は、
石田夏穂 著
『我が友、スミス』です。
もくじ
【感想】「別のわたしになりたい!」
僕は少しなめていました
筋トレをボディービルを
トレーニー(筋トレする人のこと)の
努力と熱意を
そしてそのトレーニを描いた
この作品の奥深さをです
ひとり黙々と筋トレをする会社員・U野さん
会社では真面目が取り柄の地味子さんです
親しい友人も彼氏もいない
自宅と会社を往復する日々・・
そんな中、見つけた熱中できるもの
それが筋トレです
やった分だけ成果が目に見える
これは楽しいですね
そんな彼女を見つけた人がいた
ボディビル選手だったO島さんである
彼女は言うのだ
『わたしがあなたを別の生き物にしてあげる!』
ボディビル大会に出場するという明確な目標を持ち
名選手だったO島というトレーナーも得て
U野さんの生活は一変する、全ては筋トレのために・・
濃い充実感に深く満足するU野さん
一心に筋トレに打ち込む姿から
1つのことに打ち込む素晴らしさが伝わります
ああ、熱中するって素敵ですね
惚れてしまいそうだ笑
しかしボディビル大会は筋肉だけの評価ではなかった
美しい姿勢とポーズが採点項目となります
それはハイヒールで歩き
日焼けサロンで肌を黒くし
脱毛しお肌をツルツルにすることです
え!筋トレだけしてちゃ
ダメなんですか?
違和感を覚えながらも
ボディビル大会のために
慣れないハイヒールで通勤し
日サロで肌を焼くU野さんです
真面目ゆえ、ひたむきなんです
でも練習会でU野さんは言われてしまう
『U野!顔が笑ってないよ、笑顔で!』
いわゆる女らしさが採点項目となる
この違和感
はッ?男性目線の美人コンテストかよ?
わたしがなりたいものは
こんなもんじゃない!
そしてボディビル大会当日
からくも予選を勝ち抜いたU野さんは
決勝の舞台でとうとう行動に出る
虚飾を排し
わたしが見せたい
わたしを見せるのだ
わけのわからないルールが無数にあり
それに縛られて生きるのが当然とされています
本作はボディビル大会を通して
この常識に疑問を投げかけています
最後にU野さんが向き合うのは
1人でトレーニングする機械
スミスマシン
そう、わたしの評価は
わたしがするもの
そんな風に僕は感じました
ああ、僕も筋トレ始めようか
そして、あなたもトレーニングしてみたく
なりましたか?
作品紹介(出版社より)
【第166回芥川賞候補作】
【第45回すばる文学賞佳作】前代未聞の筋トレ小説、誕生!
「別の生き物になりたい」。
筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、
O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、
本格的な筋トレと食事管理を始める。しかし、大会で結果を残すためには
筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、
職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、
母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。
モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。
彼女が決勝の舞台で取った行動とは?
世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作。
作品データ
タイトル:『我が友、スミス』
著者:石田夏穂
出版社:集英社
発売日:2022/1/19
作家紹介
石田夏穂(いしだ・かほ)
1991年埼玉県出身。東京工業大学工学部卒。
2021年「我が友、スミス」でデビュー、第45回すばる文学賞佳作。
石田夏穂の作品紹介
『我が友、スミス』(2022/1/19)